Newspaper Essay Series (新聞エッセイ)

2007 Newspaper Essays

December 31, 2007

第14回 2007年12月21日
ホリデー・シーズン
今年もお付き合い頂きましたロスアンジェルス便りも、今回が本年最後のお便りになります。世界のいろいろなところで、自然災害、人的災 害の多い年でしたが、ここロスアンジェルス、本日は快晴、カリフォルニアの青空が広がっています。ここ数日雨模様の肌寒い日が続いていましたので、嬉しい 太陽です。やはり、お日様がさんさんと降ると、それだけで心がウキウキ、何か楽しくなってしまいますね!

先日もお知らせしましたように、アメリカは11月末の感謝祭りから、クリスマスを経て、ニューイヤーまでの一ヵ月半くらい、ホリディーシーズンのた め、皆浮かれ気分です。友人仲間で、又、会社や仕事仲間でのパーテイーや夕食会も増えますので、飲んだり、食べたりする機会が増えますし、又、クリスマス の贈り物で、友人、家族、そして困っている人達に喜んでもらおうと、お買い物にも大忙しです。これは、日本の忘年会やお歳暮の習慣に似ていますね。ただし 日本と大きく違うのは、クリスマスはあくまでも宗教行事だ、という事です。普段教会から足が遠ざかっている人達も、クリスマスイブには、家族で足を運び、 聖夜を静かに、厳かに過ごします。そして、クリスマス当日は、家族で集まって、お祈りとともに食事を一緒にします。私もクリスチャンですから、やはりクリ スマス前後は、特別な気分で教会に行きます。そしてこの時期大事な事は、人々に、そして社会に貢献するという姿勢です。沢山の非営利団体が寄付をつのりま すし、それぞれの教会で困っている人達、ホームレス、エイズ患者、薬物中毒者、アルコール中毒、貧困層、などを助けるため、いろいろな活動をします。日本 も貧富の差が広がって来ていると聞きますが、アメリカの比ではないのではないでしょうか。アメリカの場合、人種問題、移民問題などにも、波及し、それはそ れは大きな社会問題です。大変な暮らしをしている人達でも、せめて感謝祭やクリスマスぐらいはほっと一息つけるように、という願いで、プレゼントを贈った り、食事を配布したりします。

私は本年の大学での仕事も終わり、又最後のコンサートも終わり、こちらも一息ついているところです。しかし、我々のような仕事の場合、終わりがな く、家にいるからといって、のんびり放題という訳にはいかないですね!しかし忙しく出来るというのは、皆様から望まれている事なので、幸せな事と思って、 がんばっています。もちろん、野暮用も山ほどありますけれどーー。私達夫婦は、クリスマス前後には、主人の実家、インデアナ州に行き、彼の家族(両親、お 兄さん二人と妹、それにそれぞれの連れ合いと子供たち)とともに、賑やかに過ごします。何か特別な事をする訳ではありませんが、家族とおしゃべりしたり、 ご飯食べたりゲームしたり、普通の事が出来るのが、一番ですね。

本年も私のおしゃべりにお付き合い下さり、ありがとうございました。来年もロスアンジェルスから、そして旅先から、いろいろご報告させて頂きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。それでは、良いお年を!
第13回 2007年11月17日
ロスアンジェルスのリサイクル運動
早いもので、今年もあと一ヶ月ちょっとですね。ロスアンジェルスの大災害になった山火事も鎮火、沢山の方が家を失い、その方達にとって は、大変辛い年末です。山火事の原因の中には、放火もあり、憎んでも憎みきれません。又、小さい子供が何故か、暴風の中マッチ遊びをしていて、そこから大 きな火事に広がったものもあります。自然発火の山火事は、自然のサイクルで(山の活性化)ずっと続いて来たものですが、前回も書きましたように、近年人々 が景色の良さ、プライベートな環境が持てるなどの理由から、どんどん自然の中に家を建てるようになり、我々の生活に大きく影響するようになったのです。

地球温暖化という事が注目され始めて大分たちますが、紋別の気候はどの様に影響を受けていますか。東京では11月半ばでも汗ばむ陽気だとかーーー。 不思議な事に、ここアメリカではそれほど顕著に影響が出ている訳ではなく、日本ほど大騒ぎではありません。しかし、リサイクルや環境問題の先端を行ってい るカリフォルニアでは、いろいろな動きがあります。リサイクルに関しては、ペットボトルから、ビール瓶、缶、すべてのボトル入りの飲み物に関しては、買う 時にをの入れ物代を払うので(小さいもので1本5セント、約7-8円、大きいサイズでその倍)、飲んだ後にためておいて、皆リサイクル場に行き、換金しま す。2人暮らしの我が家で、一ヶ月半で1200円くらいになります。この制度のお陰で、ペットボトル、缶、ビンなどの回収率が非常に高くなりました。換金 する事は出来ませんが、週一回のごみの収集では(一軒あたり、それぞれ大きな車輪付きのゴミ入れが3種類配られ、一つが生ゴミと一般ゴミ、一つが庭から出 る木や草、もう一つがリサイクル用です。)、様々なものがリサイクルされます。例えば、リサイクルのゴミ箱には、スーパーのプラスチックのゴミ袋から、缶 づめ、新聞、封筒や広告などほとんどの紙類、クリーニング屋さんから来るハンガー、ヨーグルトやマーガリンなどのプラステック容器、ダンボール、などもう 沢山ありすぎて書ききれないくらいの生活から出るゴミを入れ、それがリサイクルに行きます。又、庭を手入れして出る、木の枝、芝の刈ったものなどは、別の 庭専用ゴミ箱に入れ、これもリサイクルに行きます。リサイクルするものの範囲がどんどん広がり、一般ゴミとして出すものは、年々減っているのを実感しま す。

来週は感謝祭の週で、アメリカではとても大事な家族行事の一つです。そしてこれが終わると、皆クリスマス、ニューイヤー(新年)まで、ホリデー(祝 日)気分で、年を越します。クリスマスは、家族、友人、同僚、新聞配達の人や郵便屋さんなどに、ちょっと気の効いたプレゼントをする季節なので、これから が、デパートなどの商戦真っ盛りです。私もそろそろお買い物リストを作って、町にショッピングに繰り出さなければーー!それでは、これから寒くなるでしょ うから、皆様どうぞお体に気をつけて下さいね。それでは、次の今年最後のお便りまで!
第12回 2007年10月21日
秋らしくない、ロスアンジェルス
紋別の秋はいかがですか。こちらも寒くなったり、又暑い日がちょこっと来たり
ですが、次第に秋らしくなって来ました。ロスアンジェルスで紅葉?と驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、きちんとあるんですよ。特に私が住んでい る山側は、寒暖の差があるので、結構美しい紅葉が楽しめます。しかし、日本でも報道されているかもしれませんが、ここ数日は非常に強く乾いた風が吹き荒 れ、南カリフォルニアのあちこちで、山火事が起こり、それどころではありません。500軒以上の家屋が燃え、沢山の建物が大きな被害を受けています。以前 にもお知らせしたと思いますが、この乾燥した強風を、「サンタアナ」と呼び、これが吹くと必ずと言っても良いくらい、山火事が起こります。雨季に生えた下 草が、乾季(夏の数ヶ月はほとんど雨が降らない)を経てカラカラになり、これにちょっとした事で火がつき、強風と共に、火事があっという間に広まる訳で す。空気中の湿度が、ここ数日は10%を切る事もあり、目や鼻が痛くなります。この山火事は自然のサイクルでもあるのですが、近年沢山の家が山間部にも建 ち、これらの家が大きな被害を受けるようになったのです。

閑話休題!ハリウッドの俳優達、歌手達のお騒がせ記事は日本にも伝えられている事と思いますが、特に目を引くのは飲酒運転でしょうね。アメリカの飲 酒運転の基準は日本と少し違い、多少は飲んでも良い事になっています。この車社会で、どこに行くにも車なしでは行けず、又東洋人のようにアルコールに体質 が弱くないので、すぐに酔っ払って顔が真っ赤!という事にはなりません。でも、もちろん基準値を超えての飲酒は固く禁じられていて、常習になると禁固刑と いう事もあります。どちらにしても、「飲んだら乗るな!」が、安全ですね。

今期の音楽シーズンも開幕。私もいろいろと演奏会に忙しくしています。数週間前には、ジョージア州のアトランタ市に行っていました。ジョージア州の 方々は南部訛りの英語を話して、歌うような感じで、とても素敵ですよ。カリフォルニア州はまさに人種のるつぼですが、ジョージア州ではあまり東洋人は見か けず、又南米からの移民もあまりいないようです。日本でも県によって、方言もあれば、食文化も違い、人々の顔も違う事もあるくらいですから、この大変巨大 なアメリカでは、州によって、本当に様々な事が違います。しかし、いつの時代も大きな問題のひとつは、人種問題、宗教問題で、これは根が深いだけあって、 簡単に解決出来る事でもなく、様々ある問題を理解した上で、相互関係を築いていく、という感じでしょうか。ですから、日本の「赤信号、皆で渡れば怖くな い」の逆で、個人がとても尊重され、「人と違う意見を持つのが当たり前」を前提に、物事が進みます。こういった感覚は、引越して来てすぐに理解出来た訳で はなく、何年も住んで、人々、家族、仕事仲間との関係から少しずつ分かって来た事です。だからと言って、声高に物事を押し付けるのではなく、やはりそこは 万国共通の処世術というものは、ちゃんとありますよ!相手を立てて、自分の意見を言うというのが、とても大事です。

10月終わりは、ハロウイーン、11月3週目は感謝祭、そして12月のクリスマスと、この当たりから年末にかけて、大きな行事が続きます。寒くなりますでしょうから、どうかお体ご自愛下さいね。それでは、又次回に!
第11回 2007年8月27日
ケネデイー・センターでの演奏

8月ももう終わりに入り、紋別では秋の気配が感じられるようになっているでしょうか。私の夏は、お陰様で沢山の有意義な演奏旅行に恵まれていました。古巣 のテキサス州ヒューストン市での演奏会に始まり、毎年参加しているカンサス州での音楽祭へ、それからここ数年続いているアメリカ音楽の紹介コンサートで日 本へ、そして最後がアメリカの首都ワシントンDCにある名門のケネデイーセンターでの演奏会でした。

このケネデイーセンターというのは、ご存知の方も多いと思いますが、故ケネデー大統領を記念して建てられたものです。美しいポトマック川の近くにあ り、とても威厳を持った建物です。もちろんワシントンDCという街は、多くの国の大使館があり、アメリカ政府の重要な機関がある所でもあります。そして、 沢山の美術館、博物館、記念碑もあり、観光客でも賑わっていますよ。
私のコンサートは、ケネデイーセンターが一般のお客様に無料で解放しているコンサートシリーズの一つとして企画され、紋別での演奏のように、演奏とお話し を混ぜて、行いました。幸運な事に、会場は一杯で、床に坐っていらっしゃるお客様もいらして、演奏させて頂く私も、とても乗ってコンサートを進める事が出 来ました。ご興味があれば、ケネデーセンターのウェッブサイトで、私の演奏をビデオで見る事が出来ます。(The John F. Kennedy Center で、サイト を探し、そのサイトの中でMillennium Stage に行き、2007年8月23日 Junko Ueno Garrettと検索すれば、私のコンサートが見つかるはずです!)

アメリカでは、9月が新年度の始まりですので、これから大学は新学期、音楽の世界では、2007年―8年度のシーズンの始まりです。私の今シーズン の始まりは、もちろん大学でのレッスン再開と、9月はロスアンジェルス近郊でいくつか、それから、ジョージア州のアトランタでの演奏会が予定されていま す。今年も皆様に喜んで頂けるような、美しい音楽をお届けして行きたいと思います。それでは、又、次回のロスアンジェルス便りで、お会いしましょう。
第10回 2007年5月23日
古巣に帰る
皆様お元気ですか。私は今、テキサス州のヒューストン市にコンサートで来ています。ですから、正確に言えば、今回はテキサス便りです!ヒューストンは宇宙基地のナサで、皆様にもお馴染みかと思います。ナサの中の博物館には、いまでも月の石が飾ってあるんですよ。

テキサス州は日本全体の約2倍半。とてもとても大きな所です。だから何でもビッグ!敷地は有り余っているので、道路も道幅がとんでもなく広いし、建 物もとにかく大きいのです。又、レストランでの食事の量が、とんでもないくらい多くて、良いところはビッグでも良いけれどーーと勝手に思ってしまいます。 私はこのヒューストン市に、2000年にロスアンジェルスに引っ越すまで、約10年ほど住んでいました。だから、古い友人達に会えたのも、今回の旅の大き な収穫でした。もちろん年月と共に町並みは変わるけれど、人間というのはそう簡単に変わる事はなく(お顔の多少の皺としみ以外は!)、思い出話しに花を咲 かせています。友人達と一緒に所有していた時間というのは、宝物ですね。そこからいくらでも話しがはずみ、いつしか笑いころげています。

地理的に言うとヒューストンはメキシコ湾に近く、日本の梅雨のような蒸し暑さが特徴です。外はそんなに暑くなくても、湿気がひどく、クーラーをガン ガンにつけるという状態で、健康には余り良くないのでは。昨夜ホテルの部屋に帰ってみると、テーブルに置いておいた本のページがヨレヨレになっていて、ま さに湿気君の仕業です!実は寒くてクーラーを切っておいたら、この始末です。

私のアメリカ生活の第一歩にもなったヒューストン。普段は思い出す事も余りないのですけれど、こうやって来てみると、10年分の思い出があちこちに 感じて、感無量です。こうやって人間というのは、思い出をいろいろな引き出しにしまっておいて、普段はほったらかしにしてあるけれど、いざ古い引き出しを 開けてみると、瞬間的にその過去の時間に戻ってしまうのですね。これで、ロスアンジェルスに帰ったら、今見ている引き出しは元に戻して、いつも使っている 引き出しを開けるという訳です。これを書いている時間にそろそろ飛行場へ行く時間が迫って来ました。メキシコと国境を境にしているテキサス州から、西海岸 のカリフォルニアへの帰途です。それでは、又、次のお便りでお会いしましょう。お元気で!
第9回 2007年3月11日
ご無沙汰の5ヶ月

10月に紋別で演奏してから、あっという間に5ヶ月が過ぎてしまいました。本当にご無沙汰しています。紋別の今年の冬はいかがですか。

こちらロスアンジェルスは、3月3週目に入り、ぐんと春めいて来ました。というより、今週は夏のような気候になりそうです。と言いますのも、覚えて いらっしゃる方も多いかと思いますが、ロスアンジェルスというのは、西に海岸、東に行くとモハビ砂漠があり、砂漠からの大変乾いた強風が吹くと、とても暑 くなるのです。昨日から「サンタアナの風」と名づけられたこの砂漠風が吹き、とても乾燥。湿度が15パーセントを切っています。そしてこの砂漠とともに思 い出されるのが、自然林の火事です。今日も乾燥し切った下草から火がつき、民家に迫っている地域の火事が報道されていました。火事の地帯では湿度が5パー セントだそうで、それが火事の大きな要因になっています。どんなに文明が進化しても、自然の力の前では、我々本当に小さく感じますね。

何故こんなにご無沙汰してしまったかと申し上げますと、昨年秋から演奏旅行が多かったからなのです。遠くは南米のブラジル、アルゼンチン、ウルグア イまで、アメリカ国内でも東海岸のワシントンDCやボストンへと、ロスアンジェルス近郊での演奏に加え、音楽出張の機会が増えたからです。アメリカは広い ですから、私の住む西海岸からニューヨークなどの東海岸までは、直行便で5-6時間、そして時差が3時間あります。例えばロスアンジェルスからボストンま で行こうとすると、直行便で約6時間。それに東海岸は3時間こちらより先にいっているので、つまり9時間かかるような形になるのです。結構国内旅行も時間 がかかり、大変ですよ!

南米への演奏旅行はこれで、6-7度目で、いままでにもいろいろな国に行かせて頂いています。ブラジルは日本人にとっては特別で、特にサンパウロは 人口の10パーセントが日系人という町です。飛行機に乗ってロスアンジェルスからでもかなり遠いのに、第二次世界大戦前に日本から船で渡った方達の事を考 えると、そのご苦労は想像を絶します。移民の方々の中にも、戦前派と戦後派がいらして、その思いが随分と違う事が伺われます。どちらも成功を夢みていらし ているのでしょうが、戦前の方が日本ではどうしようもなくて、渡航を決意なさったのに比べ、戦後の方の多くは、学歴も高く、企業派遣など、随分と意識が違 うようでした。

音楽を通じて世界の人々とお会いして、共通の時間を持てる音楽家という仕事に、本当に感謝しています。そして行った場所でその土地の音楽家とお話し するチャンスもあり、そこで新たな刺激を受けたり、又そこから音楽的に新しい方向性が見えて来たり、私の中ではとても重要な事です。音楽はそれぞれの国の 国民性をとても反映していると思いますので、違った国の音楽を聴いたり、ダンスを見たりというのは、本当に興味がつきませんね。

私の音楽旅行、まだまだ続きますので、今後もロスアンジェルスからのご報告に加えて、世界の興味深いお話もお届け出来たら、と願っています。それでは、次の機会まで、お元気で!又紙上でお会いしましょう。