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私の好きな詩 吉野 弘 「祝婚歌」 11/9/09

November 9, 2009

今回は、私の好きな詩をご紹介したいと思います。吉野 弘さんの『祝婚歌』の著作権に関しては、「イッセーおやじの中年のひとりごと」に吉野さんご本人のお考えが紹介されていますので、それを参考にして独断で、皆様に是非読んで頂きたく掲載させて頂きました。この詩は、夫婦間だけに限らず、人と人との関係に、とても大事なことを問いかけていると思います。私ももっと若いうちに、こういうことが分かっていればなあ、と今更ながら思います。

祝婚歌 吉野 弘
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい