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才能があるって、何?  3/29/10

March 29, 2010

一般に「才能がある人」と聞いた時、どんな人間像を思い浮かべますか?モーツアルトの様に、子供の時から一つのことに、飛び外れた能力を発揮して、他と全然違う感じでしょうか。そういう部分もとても大きいかもしれないけれど、私は、思い込んだ事に一直線に努力して努力し抜く強い心、気持ちだと思います。ここ5年くらいレッスンに来ている14歳の男子生徒がいるのですが、私のところに通い始めた頃は、他を抜いてずば抜けていました。勘も良いし、音楽的な感覚も良くて、ちょっとやると、曲をすぐに自分のものにして、小さい子の為の地元のコンクールなどで、金賞を取っていました。でも、それは子供用の曲だったから。それが次第に難しい曲になると、曲の深さを追求する気持ちがない、自分にチャレンジしてより良く弾こうという気持ちがない、曲を通して弾くのは大好きだけど、立ち止まって出来ない箇所をきちんと出来るまで練習する堪え性がない、など、問題山積。そのくせ、自尊心だけはとても強く、自分は最高と思っているから、悲しいかな、手のつけようがないんですね。私はずっと口を酸っぱくして言って来たけれど、両親も完全に「自分の子供はを天才」と、思い込んで、他の人達の意見を聞く耳を持てないので、せっかくの彼の持って生まれた才能も生かされずにいます。何と皮肉な事でしょう。しかし、この生徒と違って、謙虚に自分の欠点を見つめる力があり、きちんと目標に向かって地道に努力出来るという子供もいます。他人の素晴らしさを認め、謙虚に努力する。他人との競争ではなく、謙虚に自分の欠点を見つめる力を知っている、そういう子供達は、スタートはゆっくりだけど、だんだんに「天才児」達を追い抜いていきます。もちろん、最高なのは、生まれ持った並外れた才能に加え、謙虚に努力出来る事ですけどね。

一つの事に一生努力し続けるというのは、大変なことです。まさに職人芸です。誰も認めてくれないかもしれないけれど、自分との対話で、よりベストを目指して生きていく。与えられたことをきちんとこなす。音楽が出来る喜びだけでなく、逃げないで自分との対話ができるピアノ弾きになりたいですね。