ピアノ共演者としての音楽家人生  5/27/10

May 27, 2010

現在までに、本当に沢山の音楽家の方達と共演をして来ました。今までは、こうして他の楽器と演奏するピアニストの事をまとめて、「ピアノ伴奏者」と呼んでいました。しかし、近年は「ピアノ共演者」(コラボレーティブ・ピアニスト)と呼び、「一緒に共演する」という役割を重んじるようになったのです。とても嬉しい事ですね。音楽を一緒に演奏するのに、上下関係ではなく、対等の共演という呼称です。現在では、様々な音楽大学や音楽院で、ピアノ共演者学科というものを設置していて、沢山の生徒達がそこで研鑽を積んでいます。

私のピアノ共演者人生は、東京の音楽高校時代に始まりました。私の通っていた音高は、東京都立芸術高校といって、一学年に美術科と音楽科が1クラスづつ。全校で6クラスという、とてもこじんまりした学校でした。私の音楽科のクラスメートは、沢山のピアノの生徒と、バイオリンと歌の生徒が幾人かづつ、ホルンの生徒が一人、将来の音楽学専攻の生徒も幾人か。そういった環境ですから、その中の誰かと一緒に音楽を弾く、というのはとても自然な事でした。又、高校時代のユニークな経験としては、「詩の朗読」に併せてピアノを弾くというもの。感じたままに弾いてくれれば良い、というお話しで、即興で雰囲気に合わせて、弾いていました。

その後桐朋学園に進み、ピアノ科専攻に。沢山の素晴らしい音楽家仲間と出逢って、ピアノのソロ曲だけではなく、様々な音楽を弾く事が出来たのは、本当に楽しかったです。特にこの時期、フルートや金菅楽器の人達と演奏をしていました。そんな中、私のピアノ教授は、私がピアノのソロ以外に時間を割くことに、良い顔をしていませんでした。教授としてみれば当然の事ですが、やはり私自身楽しくて、いろいろと機会を増やしていったのも事実。自画自賛になってしまいますが、私、初見が出来るので、新しい曲を弾くのは、そんなに大変ではないのです。その後「指揮伴」と呼ばれていた、指揮科のレッスンで、オーケストラのスコアを見ながら弾く事も始めました。これは後に、とても良い経験になったと思います。何せ、ピアニストとしては演奏出来ない、ベートーベンやブラームスの交響曲を勉強出来たんですから。そして小澤征爾先生のクラスで弾くのは、本当に素晴らしい経験になりました。

渡米後、ヒューストンで大学院・博士課程で勉強している間に、音楽高校での仕事を頂き、この仕事で私はH1ビザという、アメリカで仕事が出来るビザをもらう事が出来ました。この学校での私の仕事は、多岐に渡り、コーラスの伴奏と、声楽科や器楽科の生徒達の演奏会、公開レッスンなどで一緒に弾く事。この学校での8年間、ブロードウエイ・スタイルやジャズ風、ドイツ、フランス、イタリア歌曲、そしてアメリカの歌など、本当に沢山の声楽曲を演奏する機会に恵まれました。そして、このヒューストン時代には、オーケストラ奏者の方々やプロの歌手の方達とも、室内楽を演奏する機会を頂き、更にレパートリーを増やす事に。飛躍の時となりました。

2000年にロサンゼルスに居を移し、最初にコラボしたのが、金管楽器の方。それがキッカケとなって、次々に金管楽器の方達から共演依頼が来るようになりました。今年は、今までに既に8人の金管楽器の方達と共演させて頂きました。この春は、フルートの演奏会でも2回共演。その中で弾いた一曲が、フランスの作曲家・ドウテイーユの「フルートとピアノの為のソナチネ」というもので、この曲は何と私が桐朋学園時代に愛して止まなかった曲なんです。何十年の時を経て、私の元に帰って来た気分で、思わず大学時代の事を思い出してしまいました。一回演奏した音楽は、頭のどこかの抽斗に思い出と一緒に入っていて、こうして再び蘇るんですね。そして、私の夫がチェロ奏者なのもあって、チェロ曲は一通り演奏して来ましたので、その関係で他のチェロ奏者の方から共演を頼まれる事もしばしば。最後に、室内楽全般について。主なピアノ三重奏、四重奏は一通り演奏して来ました、ベートーベン、ブラームス、シューマン、メンデルスゾーンといった巨匠が書いた素晴らしい曲たちです。

もちろん、桐朋学園のピアノ教授のお言葉通りに、ソロに徹していれば良かったのだろうけれど(この春、それでも3回ピアノソロ演奏会弾きましたけれど)、私の音楽人生、沢山の素晴らしい音楽家達との出会いと、素晴らしい室内楽を演奏する機会に恵まれ、リハーサルで冗談を言い合った経験。これは、何にも代え難い事です。そして、忘れてならないのが、共演者である事を選んだ事で、演奏で生活が出来たんです。これから先、どのような共演の機会があるか分かりませんが、一回一回を大事に演奏して行きたいと、心底思っています。ピアノ共演者の道、楽しいですよ。

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