切羽へ 井上荒野  新潮社 2/27/17

February 27, 2017

何とせつない話だろう。島の言葉と相まって、美しい抒情が描かれている。人々が風景の中に溶け込み、自然な時間がいくらでも続いている。何が人に幸福をもたらすのか、又何に気が付けば人は幸福になれるのか。この作者の圧巻は、何と言っても文章の美しさだろう。熾烈な事を言う月江の言葉も、醜いのではない。とことん、素敵なのだ。作者は月江にこんな事を言わせている「あの人の奥さんのことを、化け物みたいって思っていたけれど。あなたも妖怪ね。妻って人種はきっとみんな妖怪なのね。やっぱり遠慮してよかったわ」どんなに工夫しても、その苦労が見え見えの文章があるけれど、井上荒野さんの文章は角が取れてはんなりと、無理のない美しい文体に仕上がっている。まだ読んだことのない貴方。是非手に取ってみて下さい。あっという間に、井上ワールドに惹き込まれますよ!