夜の谷を行く 桐野夏生 文藝春秋 7/11/19

July 11, 2019

まず、最後の参考文献から。ああ、これだけの本を読み、ご自分でも現地に足を運び、綿密に考え抜かれた末の、出版なのだなあと、思う。作者の強い思いが、ひしひしと感じられる一冊だ。私は、連合赤軍、浅間山荘と聞けば、すぐに反応する世代。この事件の後、リンチという言葉が、我々の語彙の中に入って来た事を思い出す。40年経った刑期を終えた元兵士達(兵士という言葉を、本人達は嫌がるという事だが)の物語だ。ドキュメンタリーではないけれど、心のドキュメンタリーだと思う。洗脳というのは、恐ろしい。そして、集団というのも恐ろしい。その中に入っていると、どんなに疑問があっても、もう自分一人では、舵を変えられない。欺瞞、裏切り、傲慢・・・40年間抱えて来た元兵士の秘密を、最後のページで淡々と暴く。それも、優しさの頂点のように。とても重い小説だ。主人公に怒りの気持ちを持つ人も、多いと思う。だけど、それが人生であり、人間の性だと思う。