おもかげ  浅田次郎  毎日新聞社 9/8/19

September 8, 2019

浅田次郎さんの小説は、いつも涙なしには読めない。この本も例外に漏れず・・・こういう「良い本」を読むと、正直に人生って何だ、って心底考えさせられますね。一人一人の人間に与えられた人生の長さは、人それぞれ。だけど、一回だけ。求めるものも、価値感も、違うかもしれない。だけど・・・死に行く時に、何を思うのだろうか。私の人生の中でも、色々な「死」を見て来た。天寿を全うした人。心半ばで、悔いを残しながらこの世を去った人。若くして、自ら命を絶った人。本当に様々だ。死に行く時に、今まで思って叶わなかった事が、想いとなって出てくるのだろうか。それは、誰にも分からない。この本の中から、いくつか心に残った文章。

「・・健康診断を受けるたびに、高コレステロールだの高脂血症だのと言われるが、この薬も直ちに捨てる。どうも同じことを言われて同じ薬を嚥んでいるやつが多すぎる。みんなが同じ症状ならば病気ではなく、それが正常であるはずだから、病院や医者の都合だろうと永山は読んでいた。・・・」まさにそう!!!

「退屈はいいものだ。どうでもいいことを考える時間。非生産的な、思考と想像の時間。かつて人類は、豊かな閑暇を持て余して生き、そのまま優雅に死んで行ったのだと思う。それがいつのころからか、どうでもいいことを考えるのは怠惰とされ、非生産的な行為を排除し、自由な思考と想像を封止して生きるようになった。いくら寿命が延びたところで、そうした人生は短く、その死は貧しいものであるにちがいない。」言い得て妙。まさに同感。

「男と女のドロドロの話なんて、面白くない。それよか、「他人のような気がしないケース」のほうがずっとロマンチックじゃん」本当にそう・・・・

長編ですよ。だけど、とっても読み応えがありますよ。是非読んでみてください。