透明な迷宮 平野啓一郎  新潮文庫 4/15/20

April 15, 2020

不思議な体験をする短編集。現実に居たと思ったら、それこそ「迷宮」に嵌っている事に気付く。耽美的。スローテンポ。3次元ではなく、4次元的。万華鏡を見ていて、ふとそこから目を反らすと、外の光が眩しかったりする感じ。「Family Affair」の中に、こんな素敵な文章がある。火葬場で、家族が焼かれ、骨揚げの部屋での一コマ ー残された骨は、哀れなほどに僅かだった。誰かが砂浜に人のかたちに並べた貝殻のようで、しかもその数はまったく足りていなかった。ー とても静かな情景の中に、この一文だけで、全てを表現してしまう凄さがある。そして、この短編は、高倉健の映画のように終わるのである。先を急ぐ旅を所望するなら、この本は期待外れである。独りでいる時間が長い現在、作者もおっしゃっているように、ゆっくりとページを捲っていくのも、一興である。