我々の恋愛  いとうせいこう   講談社文庫 11/9/20

November 9, 2020

これは又随分と、厄介な、というか、奇妙な「ラブストーリー」。じゃあ、複雑かというと、そうではなく、恋愛そのものは、いたってシンプルで、純情系。私が一番好きだったのは、遠野さん(女性)が自信のなさから、初デートの時に「自分を見ないで、目を瞑って」と徹君に言ったので、徹君の愛の深さ故、徹君の目に靄がかかってしまったところ。そして、その靄の中で、彼らは恋愛を育み、信頼関係を深めていく。二人の世界がより充実し、誰にも邪魔されない強固なものになっていく過程。そこはとても素敵だなあ、と思った。脇を固める人物達が、良いにも悪いにも生き生きしているのが、物語りに深みを与えているので、良し!但し、話の構成自体が沢山の面を持っているので(きっと作者はこうは思っていないのだろうけれど)、「恋愛」という中心のテーマに集中出来ない感が否めない。そして、大長編なので、読み進めるのにかなりの体力(!)がいる。今、徹君と遠野さん、どうしてんだろうか。