Book Reviews  マイブック評

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イルカ よしもとばなな 文藝春秋 4/10/19

April 10, 2019

久しぶりの、ばなな本。彼女の本の魅力って、何だろうって、考える事ありません?世界各国で翻訳され、読まれている。国境を越えて、確実に共感出来るコンセプトがある。何だろう・・・って。圧倒的に女性の読者が多いとは思うのですが、女性の五感に語りかけるものがある。もう、本能と言っても良いような、ベースのところで。「語り部」調のリズムで、こちらの心にどんどん入って来る。心を捕らえられてしまう。はっきりと告白しますが、この「イルカ」も、何だか知らないうちにのめり込み、あっという間に読んでしまいました。説明不要ですね。

八月の路上に捨てる 伊藤たかみ   文藝春秋 4/8/19

April 8, 2019

第135回 芥川賞受賞作。ネット生活が始まって、ほぼ20年。全てが、短いスパンで起こり、消えて行く。日本語も随分と変化した。表現方法も、コミュニケーションの仕方も変わった。そして、一番大事な自己表現というものも変わり、もちろん愛の表現も変わって来た。そういう多々ある日常の変化と、日本人の心の根底にある揺るぎないものとの共存。その接点にあるのが、この小説かなあ、と思う。なかなか、素敵だ。細切れにした日常を、とても丁寧に表現し、臨場感溢れるストーリーに。短いので、すぐ読めますよ!

君は永遠にそいつらより若い 津村記久子  筑摩書房 4/1/19

April 2, 2019

ななんと!凄い感性。洒落た表現の対極にあるような、心の奥から絞り出すよう感じ。それでいて、軽やかなジョーク混じり。そして、残酷なんだけど、それが優しさ故だったりする。でも、やはり最後は「愛」なのだ。カッコなんて、つけている暇はない!テンポの良い文章に乗って、私こと中年読者も、大学時代に返って、学食を浮遊した模様。すっかり、本に入れ込んでしまいました。これが津村さんのデビュー作で、かつ太宰治賞受賞作。いやはや、余りのスゴさに、強烈なパンチを食らいました!

三月は深き紅の淵を  恩田陸   講談社文庫 3/30/19

March 30, 2019

非常に趣向の凝った、お洒落な作品ですが、私の脳味噌では、計り知れぬ事が多過ぎて、厄介であった事も事実です。幻の本探しというテーマなのだが、4章からなるそれぞれのお話が、私の中で絡んで来ず、終始本に没頭出来ず。。。幻を彷徨いました!

これからお祈りにいきます  津村記久子  角川文庫  3/17/19

March 17, 2019

大切な誰かのために心を込め祈る。その願いを叶えるため、自分の取られたくない体の一部をいろいろな方法で工作し、神様に捧げる風習。「サイガサマ」の祭りで、それが奉納される。そして時に、その奉納した工作で作った体の一部が、実際の体から、ひょこっと消えてしまう。そのため、雑賀(サイガ)町には、体の一部を失った人が時折いるという訳だ。密かに愛する人のために祈る。見返りを望まないどころか、自分の体の一部まで捧げてしまう。そして、その失った不自由な体を、淡々と受け入れる。人生の根幹に迫るようなテーマであるのだが、そこを「お隣り近所的」な物語と、親近感のある文体が、こちらの心にスーッと入ってくる。なかなか、素敵なお話しだと思いますよ!

うつくしい人  西加奈子  幻冬舎文庫 2/24/19

February 25, 2019

心が芯から疲労する事。これから逃避出来た主人公百合は、ある意味幸せ。逃避が出来ずに、がんじがらめになっている人がどれだけいることか。そして、家族の問題を引きずっている人も、そりゃあ沢山いる。兄弟との葛藤、親との軋轢。何でも、ありだ。本書は、逃避旅行に親のお金で出かけた百合の、回復記というのか、解放記というものである。その中で、姉との軋轢に想いを馳せる。微妙な心の声を、全部きちんと、拾い上げていく西さんの、素晴らしい文章に、きっとのめり込んでいくはず!

白いしるし 西加奈子  新潮文庫  2/19/19

February 19, 2019

ポーランド映画の”Cold War”を見た後、この究極の恋愛小説を読んだ。ああ。。やっぱり私は、日本人。全てがしっくりする。心から共感し、涙する。夏目と間島。会うべくして、出会った二人。濃密な二人だけの時間。それはとても短いものだけど、その豊かさ故に、時間が関係なくなる。”想いを馳せる時間”、何て苦しく、素敵なのだろう。是非、お薦めの一冊。

タンノイのエジンバラ 長嶋有  文藝春秋 1/21/19

January 21, 2019

人生の一コマを切り取り、それを丁寧に描ける作家、長嶋有さん。4編の短編からなるこの本。どのお話も、もしかすると、見逃してしまうかもしれない、だけど、とても大事な、とても苦しい、だけど、とても素敵な、そんな人生の一コマを、描いている。オンラインに翻弄される時代、こういった時間空間が、とても貴重で、特別だ。オンラインの生活が普通になってしまった現在、情報も溢れ、ちょっと素敵なウェッブページも平凡になり、人は次から次へと「興奮」を求める。「自分であること」を持ち続ける大変さもあるけど、それが出来た人が人生の光を見つけて行くと思う。そういった方向性を差し出してくれる、本です。

夕子ちゃんの近道 長嶋 有 新潮社 1/8/19

January 8, 2019

私も日本に居た頃は、行きつけの居酒屋があって、何となく仲間が集まって、家族っぽくなったりして居た。日本的な空間というか、空気感というか、チマチマと言うと語弊があるかもしれないけど、半径10メートルくらいの中で起こる日常が、描かれているこの本。片側が5車線くらいあるフリーウエーがバーンと走っているアメリカ暮らしの中にいると、遥か彼方の物語に見える。とっても、素敵なのだけれども。日本人にはやっぱり「裸の付き合い」とか、「隣組」とか、「町内の回覧板」とか、が似合うなあ。だjけど、日本に帰国する度に思うのは、ちょこっと旅人で行くと、町はごちゃごちゃしているものの、「人間味」とか「温かみ」に触れるのは困難だと言う事。以前にも書いたけど、「故郷は、遠くにありて思うもの」とは、言い得て妙。日本の友人たちからも、「家族」の難しさについて聞かされるし・・・映画「万引き家族」然り、血の繋がりとは関係ない密な関係が、求められている時代なのだろう。「夕子ちゃんの近道」でも、そんな寄集めの集団での、「暖かい」人間関係が描かれている。(追伸:大雑把に見えるアメリカ社会だけど、家族の絆は強いし、家族を皆本当に大事にして居ますよ。)

猛スピードで母は 長嶋有 文芸春秋 1/2/19

January 2, 2019

カッコ良い、お母さんだ。それも飛び切りの、カッコ良さ。そして、自分の信念を曲げない。「我が道」を行くのだけど、決して我儘ではない。離婚して、男友達だっている。結構、モテるのだ。そのお母さんが大好きな慎が、「母」の事について語る小説。「母」はいつも、猛スピードで車を走らせる。