Book Reviews  マイブック評

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スイート・ホーム 原田マハ ポプラ社 2/3/20

February 3, 2020

我々江戸っ子には、関西弁というのは、永遠の憧れ。ある意味、とてもエキゾチック。不思議な生き物だ。「スイート・ホーム」は全編、この関西弁のテンポとムードで進む。(田辺聖子さんが、この関西弁小説の草分けかもしれないですね。)この「スイート・ホーム」は、とっても面白いし、とっても優しい。ホンワカ、フワフワ!この小説の中心点にある、ケーキ屋さんSweet Homeそのもの。だけど、私にはちょこっと、甘すぎるかなあ。お菓子の事じゃなくて、小説が!

イノセント(集英社) ファーストラブ(文藝春秋) 島本理生  1/26/20

January 25, 2020

不思議なほど、2冊とも同じような女の子(女性という表現は、この場合当てはまらないと思う)が主人公だ。本を読んでいる間、谷崎潤一郎の「痴人の愛」が、頭にまとわりついて離れなかった。男を惑わせているような、それでいて男に翻弄されているような、天使でいて悪魔でもいる、そんな”女の子”が主人公である。どちらにしても、天才的なストーリーテラーの島本さん。読者を引き摺り込んで行く。「イノセント」も「ファーストラブ」も、私的に言えば、原罪がテーマだと思う。物語の本質も、同じところに行き着くと思う。どちらの主人公も、男性から大きな虐待を受けるも、何故かそこに帰り着いてしまうという、精神の問題を取り上げている。そして、儚げで美しい女の子を助けたいという男性が現れる。主人公を取り巻く状況は、2冊とも大きく違うけれど、映像としてみれば、同じカラー。フィルターがかかったような、靄に包まれた感じ。売れっ子作家の島本さんの作品、今後もチェックします!

天国はまだ遠く 瀬尾まいこ 新潮文庫 1/14/20

January 14, 2020

自分の居場所、ってどこだ?死に場所求めて来た彼女、うっかりと死ねずに、自分と向き合うお話。現実の世界では、ストレス一杯で、全部放り投げてどこかに行って、それで逆転出来るか?というと、そんなに簡単ではないかもしれない。だけど、この本読んで、「こんな気持ちで、落ち込んでいるの、自分だけじゃなかった・・」って思える人も、沢山いるんじゃないかなあ。どちらにしても、何かに躓き次のステップに踏み出せないでいる時に、誰かに「相談」もとても大事だし、話す事で、気持ちが楽になるというのも、本当だけど、やっぱり自分できちんと答えは出さないと、本当にはならないと思う。(自分の経験から!)短いので、すぐに読めるから、お手に取ってみては?

本日は、お日柄もよく  原田マハ  徳間文庫 1/14/20

January 14, 2020

スピーチライターという、聞き慣れない職業の、熱い青春物語。私も、”言葉”が大好きなので、フムフムと頷きながら、読んだ一冊です。どの時代にもきっとあったであろうこの職業。つまり、スピーチの原稿書き。この本の中では、スピーチ指導、そして政治をも動かしてしまう!時代の変遷と共に、言葉選びや、言葉運びは、大きく変わって来ていると思いますね。その辺のところ、歴史的にも追求したら、面白いテーマだなあ、と思ってます。

戸村飯店青春100連発 瀬尾まいこ 文春文庫 1/11/20

January 11, 2020

これ又、青春全開のお話。映画なら、涙と感動で、終わっても立てなかった、などとなるのかもしれないが(これはちょっと大袈裟!)、元気一杯・青春真っ只中の、戸村兄弟(漫才のコンビみたいだなあ。名前もヘイスケ、コウスケだし)の感動の成長記録だ。戸村飯店は、親が経営するメチャ庶民的、かつアジ抜群のお店。そして、大阪に位置する。そこで育った性格真反対の二人が、自分の道を見つけていく。東京人の私としては、大阪のテンポと元気が、それだけで、嬉しい。紙面から、戸村飯店の、油の匂いがして来るようだし、常連客のダミ声がこだましているようだ。海外在住者としては、今だに馴染めない言葉に、「元気をもらう」というのがあるが、正にそれ!元気になりますよ。

僕らのごはんは明日で待っている  瀬尾まいこ 幻冬舎文庫 1/11/20

January 11, 2020

読後、何だか心がフット暖かくなる本。過去の悲しみを引きずる僕、こと葉山君、が、鶏肉が嫌いだけど、ケンタッキーなら食べられる、上村と出会い、心を開き、「愛」を見つける。一言で片付けるな!と、お叱りを受けそうだが、そこは、一つ本を読んで頂きたい。「愛」を見つけると言っても、それは一筋縄ではいかない。もちろん、多々の困難を乗り越えて。良く言われる事だけど、「マイナスの経験をプラスに変えろ!」の典型かなあ。但し、自分に嘘をつかなければ、の条件付きで。高校から、若大人になるところまでのお話だけど、私のような立派な中年でも、楽しめる本ですよ!

あの家に暮らす四人の女  三浦しをん 中公文庫 1/2/2020

January 2, 2020

私の大ファンの三浦しをんさん!古ぼけた洋館が舞台なので、世田谷の祖父母の昔の家を思い出しながら、読んだ。もちろん、祖父母の家はとっくの昔に建て替えられたけど、この本の洋館は、今でも建ち続けている。問題はあるのだけど・・”世間”と隔絶されたところで、その不思議な4人の暮らしは営まれている。正式に言えば、4人と一老人・山田(離れに何故か、住んでいる)だ。文章の旨さは、格別な三浦さん。こんな文章がある。「自由と独立と己れとに充ちた現代に生まれた我々は、その犠牲としてみんなこのい淋しさを味わわなくてはならないでしょう。」この文章にガーンとやられる貴方は、是非この本を読むべきです。毎日同じバスに一日中乗り続ける老人に、「おじいさんの行動の圧倒的な無為、けれど無為からしか生じぬ覚悟のような感じ、さびしさともうらやましさともつかぬ思いがきざしたためだ。」これも良い。同居する、一見能天気に見える多恵美が、「子どもの時のほうが、死ぬってことを考えて眠れなくなったりしませんでした?」これも同感。他にも、沢山引用したい文章があるけれど、兎に角この本読んでみてください。ゆっくりとした時間の中で、四人がそれぞれに個性を発揮しつつ、お互いを緩やかに尊重、心の裸の付き合いを始め、同居物語が流れて行く。河童のミイラが出てきたり、カラスの善福丸が喋ったり。お伽話も織り込んだ、心に響く一冊だ。

アノニム 原田マハ 角川書店 12/27/19

December 27, 2019

香港を取り巻くアート、そして、「アノニム」と言う不思議な団体のお話。「ルパン3世」を思い起こす、漫画小説風。なかなか、お洒落で、エスプリが効いている。この本の最後が、学生の抗議集会でアーチストの観点からスピーチし、抗議行動が沈静化した、ハッピーエンド。しかし、何と皮肉なことか、実際の香港は、今年の6月から政府に抗議する学生中心のデモ活動で、大混乱を極めており、全く終息の気配もない。私が参加する予定だった香港の国際音楽祭は、デモ隊と警察との衝突で大変危険なため今夏延期となり(別に予定されていたコンサートは中止)、来月中国で開かれることとなった。観光客は激減だろうし、この本の目玉でもある、新しい美術館の建設なども、どのようになっているやら・・超現実と、実際に存在する現代美術の絵画を合体させた、お洒落なストーリーだけど、現実の香港がひどい状況なので、いまいちインパクトがないかも・・

愛なき世界  三浦しをん  中央公論新社 12/18/19

December 18, 2019

大変な力作です。植物に生涯を捧げる学者達のお話。いつも一貫して思う事。どんな事でも良い。生涯をかけて打ち込めるものを見つけた人は、幸せです。私は心からそう思います。「寝食忘れて」何かにのめり込めるのは、幸せの極みです。それが、この本の場合、植物。それも、ミクロの世界の学者達のお話。他の人にとっては何でもないことが、のめり込んでいる者にとっては、天下分け目の合戦です。長い間の研究で探し続けていたものが、見つかった時。音楽でいえば、何回弾いてもしっくり来なかったフレーズが、ある日急にドドドーンと心に響いて来たり。まあ、そういった「他の人にとってはどうでも良いことに、熱中できる幸せ」かなあ・・植物と人間の関係が、沢山出てくる中、この一文がとっても良かったので、抜粋しますね。『翻って人間は、脳と言語に捕らわれすぎているのかもしれない。苦悩も喜びもすべて脳が生み出すもので、それに振りまわされるのも人間だからこその醍醐味だろうけれど、見かたを変えれば脳の虜囚ともいえる。鉢植えの植物よりも、実は狭い範囲でしか世界を認識できない、不自由な存在。』ビバ!超植物恋愛小説!

そして、バトンは渡された 瀬尾まいこ 文藝春秋 11/29/19

November 29, 2019

出だしは、どういう人間関係なんだろう??と、沢山疑問符が浮かぶものの、それを突破すると、わあーーもう、瀬尾ワールド。ギャハハと笑ったり、ちょっと涙ぐんだり、頑張れ!と密かに応援したり、「分かる!その感じ。」と一人ほくそ笑んだり、まあ、読者を引っ張ってくれます。合唱祭前夜の父娘の場面は、圧巻の一つ。もう、完璧に泣いてしまいます。そして、第二章(とても短い)のエンデイングに向かっての盛り上がり。そして、最後にこれしか終わり方、やっぱりなかったよなあ。と、涙拭きふき、本を閉じる。とても非日常の設定だけど、人間にとって、「何が大事か」を、とことん教えてくれる本です。毎日は忙しい!そして、私達の社会には、守らなきゃいけないルールも沢山ある。現実から目を背けることは出来ないし、もしかして、上手く時流に乗って賢くやれる人達が、「勝ち組」と呼ばれるのかもしれない。だけど、この本の主人公「優子」の半生(まだ20代前半なので)と、雨宮さんのこと、泉ヶ原さん、梨花さん、のこと、思い出すと、何か、迷っている時に、道が見えるかもしれない。どんな世代にも、お薦めの本ですよ。