Book Reviews  マイブック評

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アカシア香る  藤堂志津子   新潮社

July 1, 2015

読者をぐいぐい惹きこみ、あっという間に読んでしまった。優しい、ほっとする、小説。そして正義まっしぐら、人情厚く、羨ましい限りの友人関係。そしてカッコ良い女を描ききっている。北海道を美しく讃えるのも忘れていない。

放課後の音符  山田詠美   新潮社 7/1/15

July 1, 2015

すっごい本!!本当に!山田詠美の才能のおおきさって、半端じゃないね!この本は、最初1989年に出版された、いわば一昔前の本。だけど、キラキラして、表現の古さがまったくない。つまり、バブル崩壊の前の世界だよ!心奪われた文章が沢山あるのだけど、例えば 「まつ毛の上に雨が降っているように、瞳だけで泣いている。」「シーツのしわが、そのまま五線紙になって、それを柔く蹴とばす足先が、やさしい調べを奏でるような、そんな時間など、決して持てる筈がない。」「潤んだ大きな瞳でただひたすら、彼を見ていた。私は、その瞳に膜を張る湿り気が、その内、涙を形成って落ちて来やしないかと、人ごとながら心配になってしまった程だ。」「本当の大人の赤い唇って、絵の具箱の中のあの色みたいにあどけないんだ。」「人間が生きて行くことに限って言えば、塩と胡椒は、甘い味つけをするためにある。」本当、とってつけた表現が全くない。まだまだ沢山あるので、とにかく本を読んで下さい。それと、漢字と平仮名のバランスがとっても良い。ああ、すっかりハートを奪われた私です。

クロイツエル・ソナタ  夏樹静子  講談社  6/28/15

June 28, 2015

この題名、ちょっと素敵だと思いませんか。特に、音楽家の私には、ビビッと来ましたね。だけど、東野さんや、宮部さんの推理小説に慣れ親しんでいる私。夏樹さんには、大変申し訳ないけれど、一つ物足りなさを、感じえませんでした。本当にごめんなさい。ストーリーの根底にある、怨念や複雑化した養子問題などが、良い伏線を張りそうなのだけど、何故か、余りストーリーに入り込んでいかないんですね。文章も良いのだけどね。。。読者をぐいっと、引っ張ってくれない、なんて贅沢な悩みを語っています。

ジェントルマン 山田詠美 講談社 6/28/15

June 28, 2015

何たって、文章が美しい。お話の内容としては、一人の目立たない青年が、非の打ち所がない青年を愛してしまう。そしてその紳士仮面の下に隠されたモンスター性に気付いた時から、その彼の愛の奴隷になるというものだ。究極の愛を奏でる。そして、最後にとてつもない幕切れが訪れる。テンポといい、ストーリー展開といい、人物の描き方といい、真の本物だと思う。ああ、こういうのを、小説と言うのだなあ、と思わせてくれる。長く、日本小説界のトップを走り続けている理由が心底わかりました。

駆け込み交番  乃南アサ  新潮文庫  6/14/15

June 14, 2015

人気沸騰中、という広告にあるように、読んでいてとても面白い。不思議な力に引き寄せられて、自然と高木聖大君を応援してしまう。「とどろきセブン」のメンバーも、爽快で、素敵!年を重ねてこんなお年寄りになれたら、良いなあ。。と、つい思ってしまう。事件解決のスリラーというより、どちらかというと「寅さん」人情ものというほうが、相応しい。人気作家というのは、本当にツボを心得ているなあ!やめられない、止まらない、というコマーシャルが一昔前にあったけど、まさにそれです。

かもめ食堂  群ようこ  幻冬舎  6/14/15

June 14, 2015

この話、とても気に入っています。主人公達の名前が、カタカナのところがとても良いし、文章がすきっとしているところがカッコ良い。映画化されたけど、やっぱり紙の上の文章読んで映像を自分の中で膨らませるのが楽しい。それぞれ個性ある登場人物も、想像すると楽しいし、特に行った事のないヘルシンキの町というのが、完全に想像の中なので、素敵だ。短いお話の中に、爽やかできりっとした本筋が通っていて、あっという間に読んでしまうけど、読後に心の中にかもめ食堂が生きている。是非読んでみて下さい。

群青 宮木あや子  小学館文庫 6/2/15

June 2, 2015

とっても健康的な、恋愛小説だと思う。この作者は、「新官能派」と呼ばれているみたいだけど、私にはちっともそんな感じはしなかった。久しぶりに、清々しい青春ドラマを読んだ印象。陽に焼けた肌、自然と一体となった暮らし、スレート勝負の表現。私には、とても新鮮だった。

彼岸先生  島田雅彦  新潮社文庫 6/2/15

June 2, 2015

文庫の裏表紙には、漱石の「こころ」現代版と書かれているけれど、かなりの現代版だと思う!彼岸先生は、クレイジーだし、突拍子もない。沢山の女性を愛し、そして愛される。魅力満載だ。終いには、精神病院へ入るが、これも「嘘つき」の続きなのか、よく分からない。自分に正直であり続けるための、方便か。彼岸先生のアメリカ滞在中の日記には、現在アメリカ暮らし25年を迎える私には、同意しかねる表現、解釈が出てくるけど、まあこれは小説だし、フィクションを生きる先生を描いたフィクションなので、深読みしないでおこうっと。大長編で、アメリカ暮らしの一挙手一投足が延々と続く箇所は、すみません。。。。少し飛ばしました。これは、超ロマンス小説とも言えるし、支離滅裂とも言える。大長編読みたいという方は、是非挑戦して、ご自分で答えを見つけて下さい。

地下鉄に乗って 浅田次郎  講談社文庫 5/11/15

May 11, 2015

とても美しい小説です。だけど、何だかこういうコンセプトのテレビドラマ最近見たなあ、と思ったら、「流星ワゴン」だった。1994年に発表された本作品がきっと先にあったのだろうけれど。過去と現実を行きつ戻りつ、お話が進む。とてもレトロに、戦時中まで戻るし、私にとってのレトロもある。地下鉄銀座線には、小さい頃祖母に連れられて、浅草まで渋谷から買い物に行ったので、あの駅近くになって、電気が消えて暗くなる一瞬を良く覚えている。ちょっとよそいきの格好して、祖母の横にちょこんと座っていた私。帰りには、よく東横の上の食堂で、スパゲッテイ。ミートソースをご馳走してくれた。この小説に登場しそうだ!

シューカツ 石田衣良   文芸春秋  5/11/15

May 11, 2015

軽く読めちゃって楽しい、そして主人公に結構のめり込んで、一生懸命になる。石田さん、さすが、ヒットメーカーだけの事はあります。これはシューカツだけじゃなく、人生のいろいろな岐路に立つ、すべての人にお薦めの、「がんばれ!貴方にも出来る」小説です。でも、あんまり面白くて、自分のやるべき事をお忘れにならないように!