Book Reviews (マイブック評)

学問  山田詠美 新潮文庫  11/26/15   November 26, 2015

作家っていうのは、本当にすごい!これは、いつも書いている事だけどね。こんな素敵なお話しを、頭の中で生み出してしまうんだから、もうそれは大尊敬、大敬服です。主人公4人組の名前の付け方も、最高だし、それぞれの個性も、イカしてるんですね。人生って何だろう、とか、幸福とは、とか、そんな根源的な答えが、凝縮して、かつファンタジーのようなお話しの中に詰まっている。子供が成長していく物語だけど、どの世代が読んでも、涙あり、笑いありで、読んでしまうと思う。主人公達が、私と一緒に成長し、暮らし、悩み、怒り、笑っているような気にさせてくれた。是非お薦め!

火花 又吉直樹 文芸春秋社  11/18/15 November 18, 2015

まさに、大ヒット作。どうしても読んでみたかった。「僕」と先輩お笑い芸人の話で、今日本人なら知らない人はいない本だと思う。大尊敬する神谷さん(先輩芸人)と僕(徳永)の、とても刺激的で、かつ何だかせつなく悲しい物語。真実を追求することが、そして「自分」である事が、こんなにも苦しいことか。お笑いの世界を描きつつ、180度違う心模様なのだ。どんな世界でもそうなんだけど(音楽もね!)、側から見るのと、その世界の中心から見るのでは、全く見えるものが違うってことかな。文章で言うと、テンポが良い。表現がとびぬけている。エネルギーのアップダウンが最高。物語の最後にフォルテッシモ(音楽で使う用語で、大きな音量を指す)を持ってくるのも、とっても良いと思った。流石文学賞受賞作!

最後の家族 村上龍  幻冬舎   11/7/15 November 7, 2015

帯に「家族について書かれた残酷で幸福な最後の物語」となっているけれど、私はちっとも残酷とは思わなかった。でもこの家族が、幸福にたどり着いた事は確かだ。4人家族のそれぞれに章が与えられているので、我々読者は同じ場面を4回通過することになる訳だ。これって、時にはまどろっこしい、はっきり言って。多分、4人それぞれの視点から同じ問題を見て、問題を掘り下げるという発想かと思うんだけど、時に全く同じ表現が出てきたりして、だらける感もやむ負えない。しかし、圧巻はDVについての、定義だ。これが載っているページは、まだこの本を読んでいない貴方には秘密だが、この定義から導かれる本質と、それからの脱出法を読んだ時には、声も出ないほど(もちろん本を読んでいる訳だから、元々声には出していないけど)、感動した。そして、私の人生で起こった様々な望まない出来事を思い起こさせ、そこから私が脱出して来たことを考えた。この数ページのために、この本が存在すると言っても、過言ではなく、このページのためにこの本が、「読むに値する」ということになる。

チエちゃんと私  吉本ばなな    ロッキング・オン  10/28/15 October 28, 2015

まさに、「ばなな節」全開の本だ。ゆったりとした時の流れに、その時々に感じた気持ちがふわーっと、入っている。現実的でいて、とても非現実の美の追求ともいえるかな。ばなな本が好きな人には、たまらない一冊だと思う。よしもとばなな、まだ読んでいないのなら、一回手に取ってみては??暖かさに包まれるような気持になる事、請け合い。

R.P.O. 宮部みゆき  集英社文庫  10/24/15 October 24, 2015

心理描写が深い、ミステリー。基本的に舞台は一か所。警察内の取調室と、それに隣接する取り調べ室をミラーごしに見られる部屋。舞台は極めてシンプル。だけど、そこで繰り広げられるドラマは、すさまじい。役者は、大物がそろっている。何か、舞台でのお芝居を見ているような気にもなってくる。二転三転する中で、次第に真相が明らかになってくる。それも真犯人が自分を追い詰めていくのだ。読者も時には、だまされてしまう設定の見事さ。ミステリー界の女王(こんな言葉、宮部さんはとっても嫌いだろうけれど。)にふさわしい、読者の心にドカンとくる一冊です。

少年計数機 池袋ウエストパークII 石田衣良   文春文庫 10/23/15 October 24, 2015

石田衣良さんの、大ヒット作の一冊で、究極の「ライフ・イン・池袋」のお話し。私は池袋には住んだことはないけど、子どもの頃西武池袋線の「ひばりが丘」というところに居たので、ちょっとだけ感覚が分かる気がする。それにしても、カッコ良いマコトちゃん。。。。男も女も、まさに老若男女が惚れてしまう男子とは、彼のことだろう。クールに見えて、熱血漢。ハンサムだけど、気取らない。八百屋のお兄ちゃんであり、クラシック音楽にも造詣が深い。石田さん、すごいキャラクターを生み出したものだ。これこそが、売れっ子作家の所以でしょう。いつも読みたいとは思わないけれど、たまにすごくマコトちゃんに会いたくなる。池袋ウエストパークシリーズは、沢山あるので、私にとってまさにうってつけ!そんな、一冊です。

うつくしい子ども 石田衣良  徳間文庫 ・ リアルワールド  リアルワールド  桐野夏生  集英社文庫  9/30/15 September 30, 2015

全く内容を把握しないで選んだ(南米のツアーに持って行った何冊かの本)この2冊が、不思議にも似たようなテーマを持って書かれていたとは・・最初に「うつくしい子ども」を読んで、その次に「リアルワールド」を読み始めた時には、びっくりしたし、興味がとっても沸いた。何故って??だって、全く違うアプローチと文体で、若者達の心の襞を、そして闇を探っているからだ。どちらが良いとか、という問題では全くなく、猟奇的、狂っているとしか言いようのない状況で、子供たちの叫び声を聞き取っていく。もし可能なら、この2冊を読んでみる事を、お薦め。どちらも、読み応えがどっしりあって、考察力がとてもしっかりしている、感動作です。

ばななブレイク  吉本ばなな  幻冬舎文庫 9/30/15 September 30, 2015

吉本ばななさんの、ひと昔前のエッセイ集。だから、登場する人物が、カート・コバーンだったり、アイルトン・セナだったり、する。でも、「ばなな調」には、変わらないよ。つまり、ただ単に生活の中の独り言という訳ではないってこと。彼女の人生に大きなインパクトを与えた人の話しや、身近にいるアーテイスト仲間の話など。私が知らない人の話だったりすると、ちょっと分からなくて、ついていけない感もあったけど、なかなか面白い発想もあって、読破。

おれは非情勤  東野圭吾  集英社文庫  9/30/15 September 30, 2015

これは、「手紙」とはうって変わって、軽いタッチの学園推理小説、短編集。非常勤講師が、行く先々の学校で遭遇する不思議を、解決していく、ちょっと暖かくも、可笑しくも、楽しい、まさに「学園もの」だ。多彩で、いろいろな顔を持つ、東野さんにふさわしいですね。軽く何かを、というのなら、是非お薦め!

手紙 東野圭吾 文春文庫 9/30/15 September 30, 2015

南米コンサートツアーでは、全部で8回飛行機に乗ったので(!)、本を読む時間は、たっぷり。5冊持って行って、読んだうちの一冊が、この名著。もちろん以前にも何回か読んだことがある。しかし、何度読んでも泣けてしまうんですね。結果が分かっている、途中の経過も知っていて、それでも感動。すごいお話しです。もし、まだこの本を知らない方いるなら、是非手に取ってみて下さいね。