Book Reviews  マイブック評

View book reviews from 2008 – 2012.

薔薇恋  渡辺容子  講談社文庫 3/25/13

March 25, 2013

こちらの、渡辺さんのご本は、DVを題材にした不倫物語。こうやって、白馬に乗った王子様が、すべてのDV被害者に現れれば良いけど・・・・この王子様との恋愛部分はともかくも、DVにおける、夫と妻の相対関係は、とても興味深く描かれている。DVにおける激しい暴力と、王子様との典型的な恋愛が、180度の対象におかれ、文章が進む。そして、ご近所に住む一見幸せそうな家庭にも、それぞれに問題を抱えていることが、分かっていく。小説としてはとっても面白いし、男女間の問題をするどく描いているとも言える。けれど、天邪鬼な私には、小説とはいえども、やっぱりこの「白馬の騎士」の部分が、受け入れられない。非現実すぎるので。

涙 上・下  乃南アサ  新潮文庫 3/20/13

March 20, 2013

これも、乃南さんの、超美しい恋愛小説だ。しかし、傑作ミステリーとも、サスペンスとも、いやまた、冒険小説とも言える。壮大な冒険は、一途な想いから始まり、そして、涙で、それも悲しさの涙でなく、感情の溢れる、美しい涙で終わる。終盤のクライマックスの、沖縄での豪雨の夜の感情表現は、言葉に出来ないくらい、素晴らしい。我々読者も、あたかも暴風雨の中で、萄子と勝の物語を聞いてる気分に襲われる。ホント、すごい表現力だと思う。

左手に告げるなかれ 渡辺容子  講談社文庫 3/20/13

March 20, 2013

江戸川乱歩賞受賞作の本作、すごい期待で読んだのだけど、設定はとても良いものの、文章の運びが時にまどろっこしく感じた。二転三転するドキドキ感もあり、女性保安士が主人公というユニークさはとっても良い。けれど、ちょっと洒落てみようとする表現が、自然でなく、せっかくのリズムを壊している感が、ちょっと残念だった。今後に期待しよう!と言っても、受賞が96年なのだから、もう中堅どころの作家さんなのですね。

あなた  乃南アサ   新潮社  3/19/13

March 19, 2013

不思議な小説だ。現実とも、ファンタジーとも取れるし、超心理小説とも、オカルトとも言える。どんなカテゴリーに当てはめるにせよ、根底はとても美しい恋愛小説だ。現実に存在する男女間の感情より、深くて、甘い。乃南さんの世界に、ちょっと浸ってみたい気分になった。

北条政子  永井路子 講談社 3/18/13

March 18, 2013

久しぶりの歴史もの。それも、歴史作家のご本家が書いた本だ。政子の本質、そして女性としての視点に迫る、とても面白い本だ。歴史上の話しを、分かりやすく、かつ重厚に書くのは難しいと思う。この本は、その点において、大成功していると思う。次に何が起こるかが楽しみで、ページをめくりながら、平家と源氏の攻防、鎌倉幕府の内情、北条家のしたたかさ、政子の子供たち、孫達をめぐるどろどろとした戦い、などの、史実が明確に書かれている。この辺の物語は、NHKの大河ドラマでも良く取り上げられるテーマで、皆様もよくご存知と思うが、こうして本を通して読み解いて行くのも、面白い。本、大好き。

目醒め   藤堂志津子  講談社文庫 1/25/13

January 25, 2013

藤堂さんのご本はしばらく前に、結構読んでいる。そして、久しぶりに手に取った一冊。アメリカ在住20年を超える私には、悲しいかな、ほとんど共感出来る箇所がなかった。日本に住んでいたら、共感出来たのか、と聞かれると、「そうです」とも言い切れないのが、正直なところ。文章として、又ストーリーとしては、確かにおもしろい。でも、日本の女性って、こうなんだっけかなっと、今更ながら思ってしまった。もう20年くらい前に書かれたということもあると思うけれど。という事は、私がまだ日本に居た頃だから、気分的に分かるはずなのだけど・・・。何だか、トンチンカンな事を言っていますね。しかし、文章の流れはスムースで、美しい。藤堂さんの、新刊も手に取ってみなければ。

魂の自由人  曽野綾子  光文社文庫  1/20/13

January 20, 2013

ふウ・・・。曽野さんの語り口は、昔からとても一環している。断固としていて、揺るぎがない。どうしたら、こんなに、一徹にものが語れるのかなあ、と、私などは思ってしまう。おっしゃっていることは、どれも素晴らしく、そして正義に則っている。はすに構える風情も、中々堂に入っている。でも、素直でない私は、こう思ってしまうのだ。才能に恵まれ、美貌に恵まれ、素晴らしいご主人と息子さんご一家(再三書いていらっしゃるお母様との心中未遂とお父様のことは存じています)、聖心で幼稚園から大学まで学ばれ、そりゃー、怖いものなしだなあ、と。私など、図々しく、鈍感なくせに、どうしてもおどおどしてしまうのだ。「堂に入る」ことが出来ない。信者として、長年に渡って、沢山の方々に尽くして来ていらっしゃることは、本当に素晴らしいと思うし、私は、曽野さんの小説も大大好きだ。でも、と又、おどおど虫が顔をもたげてしまう。何とか、「威風堂々」と生きたいものだ。

A2Z 山田詠美  講談社文庫 1/12/13

January 12, 2013

筆者の大きな才能が発揮される作品。ぞんざいな言い回し、いわゆる若者言葉でざかざか語られる物語。でもとっても繊細で美しい。読んでいる最中も、これはやっぱり空想の話だなあ、と思うのだけど(だってやっぱり登場人物の設定が出来すぎているからね!)、でもどこかで共感しながら読んでいる感じ。山田さんが持っている、計り知れないエネルギー。これが、本の中にも爆発的に閉じ込められていて、登場人物の夏美が、成生が、とても生き生きしている。元気いっぱいの、それでいて、でも物悲しい、純な恋愛小説です。

仮面山荘殺人事件  東野圭吾  講談社文庫  1/5/13

January 5, 2013

どんでんがえしの推理小説。1990年に発表された作品で、東野さんの初期のものだ。文体が最近のものと大きく違い、ちょっと戸惑いを感じる方もあるかもしれない。この20年くらいの間に変化して来たのかなあ、と思いつつ、この本の後に、2010年に発表された「白銀ジャック」を読んで、文体に共通点を感じ、東野さんは沢山の抽斗を持っていることに納得。様々な抽斗から、その場にふさわしい文体、語り口を選ぶんですね。どちらも、舞台が絞られていて、一箇所の狭い人間関係の中から、事件が起こり、そして解決へ。割と、シンプルなストーリー展開だけど、読者を惹き付ける力はすごいです。ぐぐっと、引き込まれますよ。

Artur Schnabel “My Life and Music” 8/8/12

August 8, 2012

This is a book review on Artur Schnabel’s auto-biographical book. Schnabel  (1882-1951) is a legendary figure and he has been one of pianists I always respect and admire. I have studied his famous edition on Beethoven sonatas, and heard his recordings mainly on Beethoven and Schubert sonatas. Whenever I play Beethoven or teach Beethoven to my students I think of Schnabel.

One day at Los Angeles Public Central Library, I wanted to check out the music of Villa-Lobos’ Bachianas brasileiras No.4 which is not easily found. After the excitement of having Villa-Lobos in my hands, I went on to browse books in different isles. I always have a great time looking through different books in the library. To me, the library is a treasure island! My eyes caught this book, Artur Schnabel “My Life and Music”.

I deeply enjoyed reading this book consisting part 1: the 12 sessions of his autobiographical speech he gave in 1945 to the music students at the University of Chicago, part 2: the questions-answers after each speech, and “Reflections on Music” address delivered by Schnabel at the University of Manchester (translated to English).  Schnabel is a fantastic story teller (he quotes himself that his stories are all true!). He makes his experiences (mostly unfortunate ones) fun to tell. Of course he had to go through very difficult time in Europe as a musician and a human being, and we could learn many aspects from his book. He has amazing humor!!! I wish I could quote everything..

From this book, I went on to search how he taught, and found the very interesting videos on YouTube by Eunice Norton on “teaching of Artur Schnabel”. The series of sessions were organized at the University of Pittsburgh in 1987. Eunice Norton was one of most celebrated American pianists in her generation, and studied with Schnabel. She describes his teaching and principles so well with great demonstrations on important works she chose. She is a very colorful musician too. The video was made when she was around 80 years old. Evidently she had lost some of her ability on piano, but her phrasings and musicianship is greatly worth watching in this video (For instance her crescendo-piano in measure 82-83 in Waldstein’s first movement is so natural, organic and effective. Of course the repetitions of this phrase as well.)

It has been my big summer discovery to read this book, to learn Schnabel’s experience and philosophy around music, and to enjoy his HUMOR. During reading this book, Gregor Piatigorsky’s autobiographical book came to my mind. Both of them are legendary musicians and have playful humor. And they played together in piano trio settings. I hope they don’t mind my comparison.