Book Reviews  マイブック評

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武道館 朝井リヨウ 文芸春秋 6/25/18

June 25, 2018

先日、朝井さんの御本のところで、丁重に謝った私。この本で、更に一段深く、朝井さんの御本に’惹き込まれました。進化を続ける朝井リヨウ!すごい!「武道館」は、アイドルのお話。しかし、この日本語のアイドルという言葉も、かなり元の言語から変化し、原型を留めていないのでは・・多分英語のIdleから派生したのだろうけど、元の意味の「だらしない」とか「仕事をしない」とかいう意味から、どういう経緯で現在の「アイドル」という使われ方になったのか。日本語って、面白いですね。閑話休題!この本、アイドルの姿とネットの脅威とを重ね合わせ、人間の本質に鋭く切り込んでいます。114ページに「欲しいCDがある。聴きたい曲がある。観たい動画がある。知りたい情報がある。その欲をかなえるために、まず無料でできる方法を選択するようになったのは、いつからだろう。」まさに言い得て妙。その通りです。

ファックスが普及する前に青春を送った私としては、我々の青春時代を、現在の青春世代は全く想像出来ないんだろうなあ、と思います。高校時代に、ポリー二(高名なピアニスト)のショパンの練習曲のレコードを、それこそすりきれるまで、聞き込んだし、他校の男子学生との連絡は、難航を極めたものです!日本の両親の家に残してきたレコードすべて処分された時には、かなりがっかり来たものだけど、今や多分そのレコードすべてが、YouTubeで無料で聞けるはず。各家にある電話だけが、連絡の手段で、駅で待ち合わせる時の急な連絡には、伝言板(ネットのではありませんよ)にチョークで書いたものです。でも、どんなに生活が変化しても、日本人の体形が欧米型に変化しても(!)、心のありようまでは、変化出来ない。ネットなしでは機能しない暮らしと、複雑化しすぎた生活様式。難しいけれど(特に若い時は)、どういう状況に置かれても自分自身を失わずにいきたいものです。だって、どういう選択をしたにせよ、最後は誰も責任取ってくれないし、自分でかぶるしかないんですから、ね。長くなりましたが、「武道館」是非読んでみて下さい。

まにまに 西加奈子 KADOKAWA 6/25/18

June 25, 2018

貴方、今退屈ですか。それとも、仕事に追われ、へーこらしてますか。静かな夜を一人で楽しんでいらっしゃる?どちらにしても、このエッセイ本お薦めです。何と楽しいこと!ユーモアに富み、鋭い指摘と文化的示唆に溢れ、虜になる事間違いなし!私はある日、一人昼食を楽しむながら、この「まにまに」を読み、愉快な時間を過ごしていました。36ページの「浪速のマロングラッセ」のところで、余りの可笑しさに吹き出してしまい(この段階で食後のコーヒーを飲んでいた)、シャツにシミが・・・そして、別の日、156ページの「おかぼちゃさん」で、又吹き出してしまったのです。ですので、この本と同時に飲むには、透明な「水」が必須ですね。あはは!是非手に取ってみてね。

プラナリア 山本文緒 文芸春秋 6/14/18

June 14, 2018

この本も前回に続き、「開拓」した作家のものです。5つの短編が収録されています。現実感たっぷりの、時には「こんな事、見たくないよー!」と叫びたくなるくらいの、現実を突きつけられますよ。そりゃ、人生「ハリウッド映画」のようにゃあ、いかないけれど、私の希望としては、本の中では、夢を見たいし、美しいものに触れたい。だから、はっきり言って、読み進めるのは、しんどかったですよ。ようやく、どん底から5作目の「あいあるあした」で這い上がれました。作者に感謝申し上げます。でなけりゃ、どん底のままでしたからね。

垣根涼介 午前三時のルースター 文芸春秋 6/14/18

June 14, 2018

どうしても「お気に入り」の作家の本を手に取ってしまうので、新しく開拓。この本を読むまでこの作家の名前も知らず、ワクワク感で本のページを開きました。日本版「インデイアナ・ジョーンズ」というのが、私の一番の印象。ベトナムを中心にしたアクション・ミステリーですね。登場人物が、本当にインデイアナ・ジョーンズみたいなので、ちょと映画っぽいし、ミステリアスな美女も登場。役者は揃った!というところでしょうか。ストーリーも面白かったです。

白夜行 東野圭吾 6/4/18

June 4, 2018

ずっと前に読んだ本だけど、もう一度読みたくて手に取り、感激!そうだったか!こういう結末だったんだなあ、と改めて壮大なドラマに胸躍らせました。大長編ですから、読破するのに時間もかかる。だけど、やめられない!という訳で、数日どっぷりと、白夜行の世界に浸りました。途中から、もちろんカラクリは見えるのだけど、その奥に潜む人間模様が複雑で、とても先が見えない。何でこんなに糸を絡めるのか、多分本の意図は一つなのに、何で??というくらい、これでもか、これでもか、と次々に複雑化するドラマ。それが、最後の数ページに向かってテンションを高めて、そこで炸裂!もしまだ読んだことがなければ、読破してみて下さい。究極の「愛」の物語です。

世にも奇妙な君物語 朝井リヨウ 講談社  5/23/18

May 23, 2018

前回の「少女は卒業しない」で。朝井さんへの批判を全面撤回した私が、もうこの本では平身低頭、土下座しています。すごい本を書かれましたね!四谷怪談現代版、とも言うのでしょうか、おどろおどろしい人間の本性を書いていらっしゃる!それも、ちょっとしたミステリータッチで。5編の短編から成り、こちらはそれぞれに全く連続しておらず(「少女は卒業しない」の短編集は、連続してもいたので)、完全に独立、独歩。一編、一編に、背筋が寒くなるような「おち」がついていて、次が騙されないぞ!と臨んでも、又どんでん返しに合うんです。読まれる時は自分に挑戦のつもりで、どんでん返しの先読みを、お薦めします。これからの、朝井リヨウ、どう進化していくのか、本当に楽しみです。

少女は卒業しない  朝井リヨウ 集英社 5/23/18

May 23, 2018

南米に公演旅行があり、その旅で読み、とても感動した本。以前確か、朝井さんのことを未熟者のように書いたけれど、全面撤回します。この本は、高校生の卒業前後の物語で、とても繊細。7つの短編は、それぞれが完結しているものの、連続した小説にもなるという趣向。特に好きなのが、4編目の「寺田の足の甲はキャベツ」というお話。この題からして、興味惹かれますよ、ね!本の中の高校生達の言葉使いは、そりゃ、もうビビッド。高校のそばのコンビニに午後いたら、こんな乱雑な会話が聞こえてきそう!それくらい、元気な高校生達が、本のページに凝縮されているんです。寺田の足に話を戻すと、これはきゅんきゅんの恋ものがたり。乱暴な言い回しが、実に愛に溢れ、じーんと来るんですね。高校生のあなたも、または、ずっと前に高校生だった貴方にも、ぐぐっと来る、本です。是非、読んで下さい、ね。

つばさよ、つばさ 浅田次郎 小学館 5/23/18

May 23, 2018

さすが、浅田次郎さん!これは、JALの機内誌に掲載されたエッセイを、加筆、修正されたもの。ユーモアたっぷりでありながら、鋭い社会批判から、ペーソスまで。実に浅田さんの大才能を垣間見る、素晴らしい本です。「キャビアは怖い」の章では、ホントかいなあ。。と読者を唸らせたり、「黄門伝説」の章では、肛門から、黄門にすーっと繋げ、黄門様の歴史まで述べてしまう、あっぱれぶり。「小説家の午後」では、いくつものエッセイになりそうなくらい話題をぎゅう詰めにしつつ、さくっと完結させる。まあ、変幻自在のエッセイ集なのです。機上で、こんなエッセイに出会ったら、ほこっとした気持にさせられること、間違いなし。陸の上でも是非読んでもらいです。

短編集 2冊 素敵な日本人(東野圭吾)・霞町物語(浅田次郎) 5/7/18

May 7, 2018

全く異なる2冊の短編集。どちらも、大変面白く読みました。まず、「霞町物語」から。私も遅ればせながら、お相撲を愛する江戸っ子(少なくとも、4代目)。下町ではないけれど、親戚一同ほぼ全員東京です。物語は、古き良き時代の東京。洋画で言えば、イングリット・バーグマンの美しい顔が、ガス灯に霞むような風景。カッコつけしい(完璧に化石化した表現!)の若者の、心温まる日常の数々を描いています。主人公は、写真館の息子、僕。その周囲で巻き起こる騒動と涙。家族の愛。携帯電話の世には起きようもない物語でしょうね。短編集だけど、それぞれに連続していて、昔の写真アルバムをめくっていく感じです。そして、東野圭吾さんの「素敵な日本人」。9編が入っていて、それぞれに全く異なる題材とアプローチ。ミステリーが主体の、大層凝った趣向の短編集ですよ!短いお話の中に、読者を驚かせる瞬間あり、ほろっとさせる瞬間あり、社会現象への定義あり、愛情あり。。と、東野さんの才気があふれています。とても楽しめました。しかし、私の中での東野圭吾と言えば、「手紙」と「赤い指」。思い出しただけでも、涙する、人間の心に深く迫る名作ですね。閑話休題!この短編、2冊、是非手に取って見て下さい。そして、まだ「手紙」と「赤い指」、読んでなければ、こちらも是非読んで下さい。

女の一生 キクの場合  遠藤周作 講談社 3/24/18

March 25, 2018

久しぶりに遠藤周作の本を手に取り、改めて、遠藤文学の深さに感動を覚えている。新聞小説として1980年から81年にかけて、朝日新聞に掲載されたもの。キリシタンを題材にした、朝、新聞を広げた時に読むには、かなり残酷、残忍だと思われる表現も沢山あり、かつ、その「愛」の深さについて、問うた小説。感動、感動。遠藤周作がその生涯をかけて取り組んだ、「日本のキリスト教」。情けなく、狡猾、弱く、みじめな伊藤の「どうしようもなさ」と、その対象にある、強く、一途で、芯がゆるがないキクの清々しさ。キクは、クリスチャンではなく、反発もしているのだけど、何故か大浦天主堂にあるマリア像にいつも語り掛ける。それは、時には「どうしてくれるんだよ!」という批判であり、愛の告白であり、嘆願である。人の人生の長さは、とても限られている。それを貴方はどう考える?どう生きる?