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デトロイト美術館の奇跡 ”DIA: A Portrait of Life” 原田マハ 新潮社 10/31/19

October 31, 2019

アメリカ中西部には頻繁に行くけれど、まだこの美術館には足を向けたことがない。チャンスがあれば、是非行ってみたいと思う。まさに、美術館とそれを愛して止まない人達の、「奇跡」のお話し。原田さんのアート愛が、ひしひし感じられる一冊である。一枚のセザンヌの絵を巡って、お話しは始まり、終わる。本の表紙にその絵、「画家の夫人」があり、我々読者に、語りかける。様々な人の絵に対する、解釈、思い入れが章ごとに描かれ、我々読者も深く絵の中に入って行く。読み始める前に見た「画家の夫人」と、読後に見た「画家の夫人」は、心なしか違う人のようにも見える。一枚の動かない「絵」が、こんなにも雄弁であるとは・・

ロマンシェ “Romancier” 原田マハ  小学館 10/31/19

October 31, 2019

私の中では、この本は「Best of 2019」。余りの魅力に、今でも私の頭はクラクラ!このスピード感。お洒落なチャラ感。超どでかい才能とそれを受け入れる愛。激しい思い込みと、集中。アートを愛して止まない、原田マハさんの、渾身の一作だ。現実に東京であった展覧会と原田さんがこの本を執筆なさったパリの「idem」。設定も素敵だし、本当に飛んでいる!私もフランスには、親しい友人もいるし、割と行っているし、何だか他人事とは思えない。わあ・・・心ごと、鷲掴みにされた私。最高!

幸福な食卓 瀬尾まいこ 講談社 10/31/19

October 31, 2019

「父さんは今日で父さんを辞めようと思う。」という冒頭の一文。どう思います?淡々と言わせているけれど、実はとっても深くて、重い。ここに至るまでの、「父さん」の葛藤いかに!そしてもちろん、次のページに「父さんを辞めるってどういうこと?」という娘の言葉が続く。この本は、この大きくて、でもどこにでも転がっている、基本的な役割から自由になること。そして、不自由になること。そして気持ちの伸縮性というのか、自分感というのか、つまりは、「愛」に完結される、と私は思うんです。素敵な本ですよ!

望郷 湊かなえ 文藝春秋  10/31/19

October 31, 2019

望郷という言葉から自然に浮かぶ、暖かな想いと裏腹に、その奥底に潜む様々な状況を、時にはダイナミックに、時には切なく描く。そして、最後のどんでん返し。誰もが予想もしなかった(多分!)展開に驚くも、そうか・・と納得。全てのパズルが、はまるところに収まる。凄腕の書き手、湊さんの秀作だ。

いのち 瀬戸内寂聴 講談社 10/14/19

October 14, 2019

95歳で書き上げたというのが、謳い文句の小説。ご本人もインタビューで、宣伝文句に95歳が強調しすぎている・・まあ、売れるためには・・などとおしゃっていますね。「作家」という職業の業というのか、ペンに命を注ぐ作家仲間の人生が、生々しく、そして、真摯に書かれています。生きることが書くこと、人生のパートナーも書くことの一部。全てを巻き込んでの、作家人生。河野多恵子と大庭みな子の両作家との交友録も、その幅の広さ、苦しさも入れた正直さに、こちらも胃が痛くなるよう。作家業に生涯を捧げた95歳の瀬戸内寂聴の叫びが、こちらにもひしひしと伝わって来ました。

カフーを待ちわびて 原田マハ 宝島社 10/14/19

October 14, 2019

物語とは言え、こんなに人から想ってもらえたら・・・と、「ラブストーリー大賞」に輝いた作品を、少女に帰ったような気持ちで読みました。沖縄の持つ不思議な魅力に、朴訥な主人公のキャラクターが絡まり、シーサーが待つ横丁を歩いているような気分に。現実味のない設定ゆえに、こちらの想像力をうんと駆り立てます。しばし、ラブファンタジーに浸りたいなら、お薦め。文章のテンポもとても良いですよ!

優しい音楽 瀬尾まいこ 双葉文庫 10/5/19

October 5, 2019

藤堂志津子から、これまた一転。とっても日本的だけど、スタンドポイントが、全然違う。3編の短編からなる、とても憧れてしまう恋愛小説。優しいけど、ナヨナヨしていない主人公達。文章が、自然体で、とても爽やか。3編とも、人生の苦悩を扱っているのだけど(優しい音楽ー家族の死、タイムラグー不倫と障害、がらくた効果ーホームレス問題)、それが、ちっとも重くない。重くないどころか、ダンスでも踊りたい気分にさせてしまう。それは、強さと自信なんだろうな・・そして深い思いやり。つまり、愛。瀬尾まりこさんの初めての本だけど、これからも折に触れ、他のご著書も拝見させて頂こうと思っている。

絹のまなざし 藤堂志津子  朝日新聞社 10/5/19

October 5, 2019

藤堂さんは、文筆業から引退なさったのでしょうか。。最近余り、お声を聞きませんね。「絹のまなざし」も他の藤堂さんのご本同様、北海道が舞台です。そして、心理描写に始まり、心理描写に終わるという、徹底ぶり。アメリカに住んでいると、「ウジウジ」するとか、「過去の事に振り回される」とか、「常に他人と比べてしまう」とか、日本人的素質が、良くも悪くも出てしまう。しかし、多くの日本人以外の人達が、日本人の繊細さとか、実直さとか、丁寧さに、憧れを持つのも事実です。「人の気持ちを慮る」というのは、日本人のとても素敵なところだと思います。しかし、それが行き過ぎると、自分を責めたり、社会と関係を持てずらくなってしまう。様々な「負」の要因が重なった主人公が、暗闇から徐々に立ち直り、自分への自信を復活させるのが、「絹のまなざし」。雪深い北海道に想いを馳せながら、ひと時「ちょっと古めの恋愛小説」など、いかがですか。

高校入試  湊かなえ 角川書店  9/23/19

September 23, 2019

大作です。高校入試にまつわる、ヒューマニズム的観点からの問題提起に、推理小説の醍醐味、ネットの陰湿さ、三角関係まで加え、読者をどんどん引き込んで行きます。最初に、人物相関図を巻頭ページに載せて頂き、感謝致します。ストーリーのテンポの速さと、人物の絡みで、これなしには、平凡な私の頭では、筋を追っていく事が出来なかったかも・・しかし、凡頭の私ですが、最初から何故か、この人物が、「事の中心」にいるな!というのは、分かりましたよ(ちょっと自慢!)。私自信も「教育」の現場にいるので、今更ながら、ネットという巨大なパワーに翻弄されながら生きている、若者達の現状を考えました。日本の状況は分からないけれど、ネガテイブなネットの話題が出尽くし、ネットが「当たり前」になっている今、どうやって距離を置くか、どうやって「自分」を確立するか、どうやって自分の人生掴むのか、きちんと考えられる強さを持ってもらいたいものです。アメリカでは、入試に纏わる大きなスキャンダルが(大学入試に必要なテストの点を、加算する)、高所得層とセレブの間で問題になり、最近ひとりの親に実刑が言い渡されました。「入試」というのは、魔物であり、それに臨む側への、逆挑戦でもあると思います。この本の最後に、「満開の桜の花も数日経てば散ってしまう。だが、それでその樹が終わってしまうわけではない。来年も、再び花が咲く。花が咲くのは人生に一度きりではない。今年咲かなくても、来年咲かなくても、いつか必ず、花が咲く日がやってくる・・」という一文があります。今、花が咲かない状況にいる人にとっては、そんな事簡単に言わないで欲しいと思うかもしれない。だけど、花が咲く日を心の中で想う事は出来るはず。そして、そこから元気になる事もできるはず。スタート地点は、自分で作れると思う。

超・殺人事件 推理作家の苦悩  東野圭吾  新潮文庫  9/23/19

September 23, 2019

貴方、今大笑いしたいですか?お腹の底から、ガハハと笑いたいなら、この本、薦めます。私はこの本、誰もいない家の中で読んでいて、本当に良かった!笑いが止まらず、もう一人で悶絶。大層楽しませて、頂きました。超売れっ子作家の東野圭吾さんが、出版界をブラックユーモアで描くという手法。8つの事件それぞれに、出版の裏を最高におちょくる、目眩くストーリー。東野さんの、自信の程が窺えます。私は特に、超税金対策殺人事件、超長編小説殺人事件、超高齢化社会殺人事件等が、お気に入り。爆笑率100パーセント!小さな悩みを吹っ飛ばせ!