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世にも奇妙な君物語 朝井リヨウ 講談社  5/23/18

May 23, 2018

前回の「少女は卒業しない」で。朝井さんへの批判を全面撤回した私が、もうこの本では平身低頭、土下座しています。すごい本を書かれましたね!四谷怪談現代版、とも言うのでしょうか、おどろおどろしい人間の本性を書いていらっしゃる!それも、ちょっとしたミステリータッチで。5編の短編から成り、こちらはそれぞれに全く連続しておらず(「少女は卒業しない」の短編集は、連続してもいたので)、完全に独立、独歩。一編、一編に、背筋が寒くなるような「おち」がついていて、次が騙されないぞ!と臨んでも、又どんでん返しに合うんです。読まれる時は自分に挑戦のつもりで、どんでん返しの先読みを、お薦めします。これからの、朝井リヨウ、どう進化していくのか、本当に楽しみです。

少女は卒業しない  朝井リヨウ 集英社 5/23/18

May 23, 2018

南米に公演旅行があり、その旅で読み、とても感動した本。以前確か、朝井さんのことを未熟者のように書いたけれど、全面撤回します。この本は、高校生の卒業前後の物語で、とても繊細。7つの短編は、それぞれが完結しているものの、連続した小説にもなるという趣向。特に好きなのが、4編目の「寺田の足の甲はキャベツ」というお話。この題からして、興味惹かれますよ、ね!本の中の高校生達の言葉使いは、そりゃ、もうビビッド。高校のそばのコンビニに午後いたら、こんな乱雑な会話が聞こえてきそう!それくらい、元気な高校生達が、本のページに凝縮されているんです。寺田の足に話を戻すと、これはきゅんきゅんの恋ものがたり。乱暴な言い回しが、実に愛に溢れ、じーんと来るんですね。高校生のあなたも、または、ずっと前に高校生だった貴方にも、ぐぐっと来る、本です。是非、読んで下さい、ね。

つばさよ、つばさ 浅田次郎 小学館 5/23/18

May 23, 2018

さすが、浅田次郎さん!これは、JALの機内誌に掲載されたエッセイを、加筆、修正されたもの。ユーモアたっぷりでありながら、鋭い社会批判から、ペーソスまで。実に浅田さんの大才能を垣間見る、素晴らしい本です。「キャビアは怖い」の章では、ホントかいなあ。。と読者を唸らせたり、「黄門伝説」の章では、肛門から、黄門にすーっと繋げ、黄門様の歴史まで述べてしまう、あっぱれぶり。「小説家の午後」では、いくつものエッセイになりそうなくらい話題をぎゅう詰めにしつつ、さくっと完結させる。まあ、変幻自在のエッセイ集なのです。機上で、こんなエッセイに出会ったら、ほこっとした気持にさせられること、間違いなし。陸の上でも是非読んでもらいです。

短編集 2冊 素敵な日本人(東野圭吾)・霞町物語(浅田次郎) 5/7/18

May 7, 2018

全く異なる2冊の短編集。どちらも、大変面白く読みました。まず、「霞町物語」から。私も遅ればせながら、お相撲を愛する江戸っ子(少なくとも、4代目)。下町ではないけれど、親戚一同ほぼ全員東京です。物語は、古き良き時代の東京。洋画で言えば、イングリット・バーグマンの美しい顔が、ガス灯に霞むような風景。カッコつけしい(完璧に化石化した表現!)の若者の、心温まる日常の数々を描いています。主人公は、写真館の息子、僕。その周囲で巻き起こる騒動と涙。家族の愛。携帯電話の世には起きようもない物語でしょうね。短編集だけど、それぞれに連続していて、昔の写真アルバムをめくっていく感じです。そして、東野圭吾さんの「素敵な日本人」。9編が入っていて、それぞれに全く異なる題材とアプローチ。ミステリーが主体の、大層凝った趣向の短編集ですよ!短いお話の中に、読者を驚かせる瞬間あり、ほろっとさせる瞬間あり、社会現象への定義あり、愛情あり。。と、東野さんの才気があふれています。とても楽しめました。しかし、私の中での東野圭吾と言えば、「手紙」と「赤い指」。思い出しただけでも、涙する、人間の心に深く迫る名作ですね。閑話休題!この短編、2冊、是非手に取って見て下さい。そして、まだ「手紙」と「赤い指」、読んでなければ、こちらも是非読んで下さい。

A Movie “Oh! Lucy” 「オー・ルーシー」 5/3/18

May 3, 2018

この映画、飛行機の中で鑑賞しましたが、寺島しのぶの演技に圧倒!もうこの人は、演技をする為に生まれて来たとしか言いようがないです。周りを固める役者達も、確かにすごいけれど、この映画、寺島しのぶがいなければ、成り立たなかったでしょうね。はっきり言って、寺島しのぶ演じるところの超根暗の独身会社員(今風に言えば、アラフィフって、言うのかなあ。。)が、ひょんな事から奇妙な英会話教室に通い、そこから自分を爆発させる事になるお話。現実感ありありのところと、こんな事絶対有り得ない!というところが、不思議に絡み合って、度迫力の映画になっていますよ。開き直りとも違う、厭世観とも違う、個性というにはちょっとおぞましいこの女性。大爆発を経て、「愛」に辿り着くところが、救いとも言えるし、多分現実では、有り得ないフェアリー・テールというのかも、ね。絶対見る価値あり!

石原裕次郎の映画  4/26/18

April 26, 2018

TVジャパンで、昨年暮れ石原裕次郎の映画がいくつか放映されたので、いつか観ようと思って録画。正しい判断でしたね!時間のある時に少しづつ見て、改めて、「昔の映画」の良さに感動しました。まず、女優陣の美しさ!気品があり、凛としている。アメリカ映画でいえば、グレース・ケリーとか、ヴィヴィアン・リーとか。女優という特別感がとても良い。完璧に一般人と違う人種。それで良いのです!「銀幕のスター」そのものです。もちろん、裕次郎のすごさは言うまでもない。時にお茶目で、時にクール。時にヤンチャで、時に寂しげ。長身で可愛くって、そりゃあ人気があって当然だ!また、小道具や背景が、すごくアートで、CGやテクニックを超える、カッコ良さがある。昔の衣装も素敵。プチ整形とか、携帯アプリで簡単に顔を美顔、小顔にしてしまう現在。小手先のテクニックと、「嘘感」にあふれる今。シンプルだけど、「ほんまもん」に心安らぐ一時でした。

女の一生 キクの場合  遠藤周作 講談社 3/24/18

March 25, 2018

久しぶりに遠藤周作の本を手に取り、改めて、遠藤文学の深さに感動を覚えている。新聞小説として1980年から81年にかけて、朝日新聞に掲載されたもの。キリシタンを題材にした、朝、新聞を広げた時に読むには、かなり残酷、残忍だと思われる表現も沢山あり、かつ、その「愛」の深さについて、問うた小説。感動、感動。遠藤周作がその生涯をかけて取り組んだ、「日本のキリスト教」。情けなく、狡猾、弱く、みじめな伊藤の「どうしようもなさ」と、その対象にある、強く、一途で、芯がゆるがないキクの清々しさ。キクは、クリスチャンではなく、反発もしているのだけど、何故か大浦天主堂にあるマリア像にいつも語り掛ける。それは、時には「どうしてくれるんだよ!」という批判であり、愛の告白であり、嘆願である。人の人生の長さは、とても限られている。それを貴方はどう考える?どう生きる?

サラダ好きのライオン 村上ラジオ3  村上春樹 マガジンハウス 3/15/18

March 15, 2018

世界の村上が、こういう風に日常を捉えているのか・・・と、不思議な感じがするものの、何故かその「普通さ」に納得するのですね。音楽家も、ステージ上の自分と、日常の自分というのは、かなり違うし、まあそういう事なのかと、思っていますが。しかし、やはり私の中では、どうしても「世界の・・・」という気持が先に立ち、街角で会ってもおかしくない叔父さんというのが、受け入れ難い!相反することを、平気で言っています。すみません。でもきっと村上さんって、几帳面なんだろうなあとは、思っています。「ノルウエイの森」(これは私の大大好きな本です)の中には、アイロンがけのシーンが出てきて、それがとっても自然。見た事もないけれど、村上さんのシャツは、きっとピシッとしているに違いない。確信です!ああ、申し遅れました!この本は、村上さんのエッセイ集ですよ。いくつかとってもチャーミングなものがあるのですが、「献欲手帳」最高!大橋歩さんの挿絵(銅版画)が、良い味を加えているのは間違いなし。貴方も是非読むべし。

光の指で触れよ 池澤夏樹  中央公論新社 3/11/18

March 12, 2018

初めて、池澤さんの御本、読ませて頂きました。そして、とても気に入りました、その世界感に。その精神性と、日本的宗教観。新聞の連載小説として書かれたようですが、読者は毎日わくわくしたでしょうね。そして、同時に重い課題を与えられた事でしょう。夫婦と二人の子供、夫の愛人、その周囲を固める友人達の、真実を求める旅。例えば、主人公の妻が、スコットランドでパーマカルチャーを実践している友人に聞く場面がある。「こういう暮らしって、不安ではないの?もしもジャガイモの収穫がなかったらとか、もしもあそこに嵌める窓枠が見つからなかったらとか、考えないの?」と。すると、友人が「では、どんな暮らしならば不安でないか?何ならば絶対の安心の保証になる?」と言う。そして友人は続ける「外に保証はない。保証は自分の中にしかない。・・・・」この会話には、心底揺さぶられました。今でも、かなりガーンと来ていますね。文体も美しく、その中で漂う精神の会話がとても素敵で、究極を究めようとするも、がんじがらめにならない余裕がいつもある。池澤さんの次の本を読むのが、とても楽しみです。

猿の見る夢  桐野夏生 講談社 3/11/18

March 11, 2018

すべてが、最悪の方向に転がり落ちる!というお話。多分、高慢ちきな主人公が「猿」という訳なんだろうけど、何だかしっくり来ないんですね・・桐野さんの小説には、いつも大感動する私なのだけれど。主人公が、無駄に愚かすぎる!「愚かさ」に可愛気のかけらもなく、かと言ってしたたかさもない。そう、ただの馬鹿中年。だから、何故か読後にも、いつもの桐野さんの小説がくれる、どっしり感が全く持てなかった私です。すみません、こんなに批判してしまって・・きっと、貴方なら、違った感想が持てるのでしょうけれど。