Japanese Blog 日本語のブログ

ピリオド  乃南アサ   双葉社  4/5/13

April 5, 2013

乃南さんの小説は、素晴らしい音楽を聴いているようだ。クレッシェンド(だんだん音量が増えること)、デイミヌエンド(だんだん音量が小さくなること)などを、巧みに駆使して、最初から最後まで、ものすごい集中力で、ストーリーを進めていく。文章に不必要な部分がない、自然に流れていく、読者を引き込み、どどっと乃南ワールドへ引きずりこむ、まさに素晴らしい交響曲を聞いているようだ。心理描写にかけたら、現在右に出る人がなかなかいないと思う。主人校の宇津木葉子は、どこにでもいそうな40歳のバツイチ、シングル。その揺れる心を、家族の中で、不倫相手との関係で、不安定なフリーのカメラマンという仕事の中で、美しい文章で描いている。私は、身も心も、この小説に持っていかれてしまった。

ベートーベンのピアノ協奏曲第4番、そしてフランス旅行 4/3/13

April 3, 2013

3月中旬に、以前から楽しみにしていたベートーベンの4番の協奏曲のコンサート(youtube link http://youtu.be/8UvdTE1YEpw) があった。この4番のコンチェルトは、ピアノ弾きなら、誰でもが演奏したくなる、とっても魅力的な曲だ。優しさに満ち溢れ、美しい旋律がちりばめられ、それでいて、力強さもある。そして、オーケストラとの関係はまさに室内楽のようで、沢山の会話で溢れている。練習の期間から、とても充実した時間を過ごすことができ、コンサートも楽しく演奏出来て、大満足だった。そして、このコンサートの数日後、フランスへ旅立った。大学をしばしお休みして(もちろんお休みしたレッスンは、後でちゃんと補っていますよ)、リモージュに程近い友人達を訪れ、旧交を暖め、その後パリで、コンサートツアーでヨーロッパを廻っていた主人と合流した。自分の演奏なしで、こうやってきちんと旅行したのは、ホント何年ぶりだろうか・・ 練習や、コンサートを心配しないで、観光客になりきり気楽に旅するのも、たまには、良いものである。詳細は、旅の写真をフォトギャラリーにアップロードしたので、そちらを、ご覧下さいね。

トレイニャックに住むマリエールとは、久しぶりで、本当に良く話しをした。彼女は現在、再婚して、素敵なご主人フランソアと暮らしている。以前彼女の家に滞在した時に出会った、彼女の従弟や友人達も現れ、楽しい夕食もした。ご存知のように、フランスの夕食は、アペリテイフから始まり、とっても長い!力説したいのは、フランスの田舎は、特別だ!という事。ショパンやジョルジュ・サンドが、インスピレーションを受け、仕事した、というのも、分かる。なだらかな丘陵が続き、名も知れぬ湖などがあり、まさに「絵に描いた」よう。我々も、春にはまだちょっと遠い午後、近場を散策して、素晴らしい時を過ごした。マリエールは、何世紀にも渡って受け継がれた中世の家に住んでいる。日本で言えば、織田信長が祖先で、その家に今でも住んでいる感じかな??それぞれの世代で、家を直しながら、使っているのだ。現在は、ベッド・アンド・ブレックファストにして、春、夏、秋のシーズンにビジネスをしている。中世の家は、維持が大変なのである!ちなみに、お城を購入するのは、そんなに高くないんですよ。でも、どうやってそれを住める状態にするかは、贅沢を飛び越え、大資産がいる訳です・・・・パリでは、お決まりの観光スポットに加え、様々な作曲家の墓地を訪ねたのが、とっても良かったなあ。どの作曲家とも、積もる話が山ほどあるからね・・という訳で、今年も4分の一が過ぎ、春真っ盛り。我が家の庭の薔薇も、満開です。

 

夜離れ  乃南アサ  実業之日本社 4/2/13

April 2, 2013

この短編集は、怪談話集ともいえる。女性の恐ろしい本心や執着心を、紡いだ物語。6つあるそれぞれの短編が、作り話のようであり、現実のようであり、そりゃ、おぞましい。乃南さんの卓越した語り口と構築性が、ファンタジーと皮肉とからまり、素晴らしい短編集に仕上がっている。

薔薇恋  渡辺容子  講談社文庫 3/25/13

March 25, 2013

こちらの、渡辺さんのご本は、DVを題材にした不倫物語。こうやって、白馬に乗った王子様が、すべてのDV被害者に現れれば良いけど・・・・この王子様との恋愛部分はともかくも、DVにおける、夫と妻の相対関係は、とても興味深く描かれている。DVにおける激しい暴力と、王子様との典型的な恋愛が、180度の対象におかれ、文章が進む。そして、ご近所に住む一見幸せそうな家庭にも、それぞれに問題を抱えていることが、分かっていく。小説としてはとっても面白いし、男女間の問題をするどく描いているとも言える。けれど、天邪鬼な私には、小説とはいえども、やっぱりこの「白馬の騎士」の部分が、受け入れられない。非現実すぎるので。

涙 上・下  乃南アサ  新潮文庫 3/20/13

March 20, 2013

これも、乃南さんの、超美しい恋愛小説だ。しかし、傑作ミステリーとも、サスペンスとも、いやまた、冒険小説とも言える。壮大な冒険は、一途な想いから始まり、そして、涙で、それも悲しさの涙でなく、感情の溢れる、美しい涙で終わる。終盤のクライマックスの、沖縄での豪雨の夜の感情表現は、言葉に出来ないくらい、素晴らしい。我々読者も、あたかも暴風雨の中で、萄子と勝の物語を聞いてる気分に襲われる。ホント、すごい表現力だと思う。

左手に告げるなかれ 渡辺容子  講談社文庫 3/20/13

March 20, 2013

江戸川乱歩賞受賞作の本作、すごい期待で読んだのだけど、設定はとても良いものの、文章の運びが時にまどろっこしく感じた。二転三転するドキドキ感もあり、女性保安士が主人公というユニークさはとっても良い。けれど、ちょっと洒落てみようとする表現が、自然でなく、せっかくのリズムを壊している感が、ちょっと残念だった。今後に期待しよう!と言っても、受賞が96年なのだから、もう中堅どころの作家さんなのですね。

あなた  乃南アサ   新潮社  3/19/13

March 19, 2013

不思議な小説だ。現実とも、ファンタジーとも取れるし、超心理小説とも、オカルトとも言える。どんなカテゴリーに当てはめるにせよ、根底はとても美しい恋愛小説だ。現実に存在する男女間の感情より、深くて、甘い。乃南さんの世界に、ちょっと浸ってみたい気分になった。

近況、そして未来に備えて  3/18/13

March 18, 2013

以前にもお知らせしましたが、英語ページのブログは割りと頻繁に書いているものの、日本語ページに関しては、読後感以外は、ほとんど開店休業状態です。英語ページには、コンサートのこと、今勉強している曲について、又、最近行ったコンサートや映画のことなど、折に触れて書いています。最初は同じテーマについて、日本語、英語の両方で書いていたのですが、いかにせん時間に限りがあり、それが出来ていません・・・・今学期は大学で教えている学生が30人いて、又いろいろな演奏のチャンスを頂き、音楽科冥利に尽きるものの、時間に制限が・・言い訳だらけですみません。

最近、私のアメリカでのピアノの先生、ジョン・ペリー氏(日本でも演奏、公開レッスンなどなさっています)が、演奏の舞台から引退するという、お祝いのコンサートがありました。とてもエネルギッシュで、いつも沢山のことをこなしていらした先生なので、「引退」なんて考えもしなかったのでちょっとビックリ。演奏会は素晴らしいもので、ああ・・・高いレベルで弾ける間に引退するのだなあ、と深く感じました。教授活動は今後も続けていらっしゃるようですが。この会で、誰にも、そしてどんな事にも終わりがあるという事を痛感。今を大事に、そして少しずつだけ、未来に備えていかなければならないのだなあと、改めて実感した次第です。仕事も遊びも、人間関係も、明日があるさ、と思っていると、明日がずっと先になって、永遠に理想の明日が来なくなる。という訳で、気持ちを切り替え、出来る範囲で、がんばっている私です。そして、演奏から引退したら、相撲ジャーナリストになりたい、相撲おっかけになりたい、と夢見ています。日本語ページのブログは疎かになりますが、良かったら英語ページも参考にしてみて下さい。日本語ページで比較的良く更新しているのは、フォトギャラリーと、マイブック評。私は、本が大好きで、いろいろな本を読んでいます。

北条政子  永井路子 講談社 3/18/13

March 18, 2013

久しぶりの歴史もの。それも、歴史作家のご本家が書いた本だ。政子の本質、そして女性としての視点に迫る、とても面白い本だ。歴史上の話しを、分かりやすく、かつ重厚に書くのは難しいと思う。この本は、その点において、大成功していると思う。次に何が起こるかが楽しみで、ページをめくりながら、平家と源氏の攻防、鎌倉幕府の内情、北条家のしたたかさ、政子の子供たち、孫達をめぐるどろどろとした戦い、などの、史実が明確に書かれている。この辺の物語は、NHKの大河ドラマでも良く取り上げられるテーマで、皆様もよくご存知と思うが、こうして本を通して読み解いて行くのも、面白い。本、大好き。

目醒め   藤堂志津子  講談社文庫 1/25/13

January 25, 2013

藤堂さんのご本はしばらく前に、結構読んでいる。そして、久しぶりに手に取った一冊。アメリカ在住20年を超える私には、悲しいかな、ほとんど共感出来る箇所がなかった。日本に住んでいたら、共感出来たのか、と聞かれると、「そうです」とも言い切れないのが、正直なところ。文章として、又ストーリーとしては、確かにおもしろい。でも、日本の女性って、こうなんだっけかなっと、今更ながら思ってしまった。もう20年くらい前に書かれたということもあると思うけれど。という事は、私がまだ日本に居た頃だから、気分的に分かるはずなのだけど・・・。何だか、トンチンカンな事を言っていますね。しかし、文章の流れはスムースで、美しい。藤堂さんの、新刊も手に取ってみなければ。